各マスコミが、恒例の今年の10大ニュースを発表している。時事通信社の1位は能登地震、2位は自民衆院過半数割れ、3位は被団協にノーベル平和賞。読売新聞の1位は能登地震、2位は大谷選手の50-50、3位はパリ五輪メダル日本45個。東京新聞の1位は能登地震、2位は袴田巌さん無罪確定、3位は被団協にノーベル平和賞。高校生新聞の1位は能登地震、2位は米大統領選トランプ勝利、3位は闇バイト強盗。どれも能登地震が不動の1位だ。地震予知されていなかった驚き、被害の大きさ、1年経っても復旧しない対策の遅さ等で、1年中国民の頭から離れなかったのだから1位は当然だ。でも2位以降は各社の特徴が現れている。時事通信社の2位自民衆院過半数割れは順当だが、読売新聞の3位パリ五輪メダル数はお気楽過ぎる。高校生新聞の2位トランプ勝利は先読み過ぎだ。トランプは来年1月20日に就任する。10大ニュースに載るのは来年の話だ。10大ニュースって何だろうかと思う。単に記憶に残った出来事を羅列するだけでは意味が無い。この出来事をベースに来年は如何にあるべきかまでを論じないと、進歩が無い。でも、日本は30年間も進歩を忘れてしまったのだから、羅列で終わらせるのも肯ける。
今月15日、故安倍元首相の昭恵夫人が、マールアラーゴでトランプと面会した。昭恵夫人とメラニア夫人は、双方の夫が総理と大統領の職から退いたあとも、連絡を取り合っていたことが功を奏したようだ。トランプは石破首相と会うのを拒んでいたが、トランプ石破対談の道筋をつけたようだ。ところが、岩屋外相は「絶対に協力してはダメだ。通訳はもとより、一切の便宜供与をするな」と、昭恵夫人の訪米に猛反対し、邪魔したとのこと。首相がまだ会えないのに昭恵夫人が会ったら、自分たちのメンツは丸つぶれだという縄張り根性の発露だ。使えるものは何でも使うのが外交だというのに。この時点で外相失格だ。更に、岩屋は訪中し、中国人観光客向けのビザを最長30日に延長し、さらに富裕層向けに10年ビザを新設すると発表した。訪日客の急増で消費拡大に期待出来る反面、オーバーツーリズム、マナー、高額医療等問題が多い。岩屋と言えば、中国のハニートラップにかかったことで有名だ。もし、ハニートラップ故の大盤振る舞いであれば、岩屋を即退場させるべきだと思う。
英フィナンシャル・タイムズFTが、日本でユニコーン企業が育たない理由を単純明快に指摘している。ユニコーンとは、ベンチャーキャピタルVC業界で誕生した造語で、時価総額が10億ドル(約1500億円)を超える未上場のスタートアップを指す。経団連が2022年に、2027年までに国内スタートアップを10万社以上、ユニコーンを100社に増やすよう求める政府への提言を発表した。政府は慌てふためいて多額のスタートアップ支援を始めたが、日本のスタートアップ資金調達総額は年々減少しているのが現状だ。日本には、ピュニコーンが多いという。ピュニコーンpunycornのpunyは「未熟で弱々しい」という意味で、つまり、ピュニコーンとは成長が止まってしまったユニコーンなのだ。FTは日本にピュニコーンが多い理由は、早過ぎる株式公開段階で創業者が満足してしまうことと、事業がある程度成熟した段階に達したスタートアップへの支援不足だと指摘している。更に、世界的に競争の激しい知的財産を破壊したり進化させたりする必要が無く、古いビジネスをデジタル化すれば良いという低い目標に満足してしまう風土があるからだとも言う。どうやら、ユニコーンを創出するための活気あるビジネス環境づくりが急務と言えそうだ。
東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで告発した旧安倍派の裏金議員や秘書ら計65人を一斉に不起訴とした。犯罪事実を認めつつ裁量で起訴を見送る起訴猶予は、現職議員5人と秘書16人だ。だが、検察審査会に審査を申し立てられる可能性は十分にあるから、裏金事件は越年必至だ。自民の裏金事件の解決が、とうとう年を越すことになった。でも、少しは煮詰まってきた。参院政治倫理審査会でキックバック廃止の経緯を巡って世耕弘成前参院幹事長の名前が相次いで上がった。これで世耕が自民裏金の全容を知るキーパーソンに浮上した。一方で、野党は旧安倍派の松本元会計責任者(政治資金規正法違反で有罪確定)の衆院予算委員会への参考人招致を求めることで一致した。少数与党の影響で松本招致は実現可能だ。安倍派幹部5人は否定しているが、松本は2022年8月の派閥幹部会合で還流再開を決めたと証言している。証言が全く食い違っている。松本招致が実現すれば裏金派閥を長年率いた森喜朗元首相の国会招致も現実味を増す。いよいよ核心に近づきそうな気配だ。少数自民と責任を負わざるを得なくなった野党のせめぎ合いが、政治を真っ当な道へと導いているように映る。
薬不足が常態化している。インフルエンザが猛威を振るい始めたが、薬局には咳止めも抗生物質も無いのだ。薬不足の要因は、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事による製造停止とドラッグ・ラグと言われている。国は医療費低減のためジェネリックの促進を推進してきた。だが、製造能力の確保や市場での健全な価格競争を促す政策はしてこなかった。そこに綻びが生じたということだ。一方、ドラッグ・ラグも国の政策が関わっている。ドラッグ・ラグとは、海外ではすでに使用されている医薬品が、日本で承認使用できるまでに生じる時間差のことを意味する。海外では使われているのに、日本では使えないのだ。日本では、薬事承認申請をするにあたり、治験の最終段階に日本人が入っていることを重要視している。国は海外メーカーに日本人を入れるよう依頼はしているが、なかなか入れてくれない状況にある。でも、韓国や台湾、シンガポールは治験に組み入れられているケースが多いという。日本は、薬価改定のたびに価格を引き下げるので市場としての魅力が無いのだ。更に、承認申請の書類も、日本独自のものを作成して厚労省に提出しなければならない手間があるのだ。結局、ドラッグ・ラグがドラッグ・ロスへと繋がっている。厚労省は、医薬品確保について、抜本的な見直しを行なう必要があると思う。
エストニアは世界屈指の教育制度を確立している。バルト海沿岸にある人口135万人ほどのこの小さな国がどうやって世界ランキングの上位に食い込むことに成功したのだろう。エストニア教育・研究相が、仏誌ル・ポワンにその成功理由を述べている。3つの要因があると言う。1つは、グロースマインドセットだ。15歳の生徒がどれくらい自分の知的能力を信じ、勉強によって成績を良くすることができると考えているかを示している。2つ目は、エストニアには努力の文化があること。子供達は「成功するためには、熱心に勉強しなければならない」ということを知っている。3つ目は、教師の自立性だ。教育に関する決定は大部分がそれぞれの現場でなされ、学校や教師が判断し、政府が口を出すことは無い。エストニアにも、国の教育カリキュラムがあり、教育課程の修了時に子供がどういった能力を習得しているべきかを明確に定めている。国レベルのチェックがあり、結果が出ていなければ校長が教師の交代を決めることが出来るようになっている。でも、政府は目標を達成するために使う教育方法や、ツールは定めていない。全ては現場が決定するのだ。この3つ目が最も重要だ。日本もエストニアを見習う必要があると思う。
10年に1度の学習指導要領の改定が、中央教育審議会に諮問された。文科省は、情報教育の充実化、総授業時間数を増やさない範囲での学習進度に応じた学校の裁量の拡大、についての諮問を求めた。2年かけて審議・答申し、2030年度から改定される予定になっている。文科省の指示は一見現代事情の解消に合っているかのように見える。しかし、教育現場に今以上の負担をかけるだけの内容とも言える。教育内容は雪だるまのように増え続けている。小学校には外国語もプログラミング学習も導入された。思考力・判断力・表現力も重視されている。教科書のページ数は増え続けている。教師も児童・生徒にも負担は増すばかりだ。しかも、大学を目指すためには放課後の塾通いだ。現在は全員が大学へ行く時代になっている。塾に行かなければ大学受験も覚束ないのが現実だ。と言うことは、現在の学校教育が破綻しているということだ。見方を変えれば、塾へ行かないと受からない大学入学試験内容にこそ問題がある。文科省は、小手先の中央教育審議会でお茶を濁すのではなく、大学入学試験内容の改正から手を付ける必要があるはずだ。
インフルエンザの新規感染者数が週を追う毎に倍増している。遂に1医療機関あたり42人となり、警報レベルの基準となる30人を超えた。休校や学年閉鎖になった学校や保育所は5800施設に達している。一方で、新型コロナの患者報告数は全国で1医療機関あたり5人を超え、4週連続で増加している。更に、インフルとコロナだけでなくリンゴ病にも注意が必要とのこと。患者の多くは9歳以下の子どもが占めるが、大人が感染するケースもまれではないという。コロナでお馴染みになった二木芳人昭和大医学部名誉教授は「コロナ禍で行われていた手洗い、うがいなどの感染症対策がおろそかになっている。コロナワクチンが有料になり接種する人が減った。その上ウイルスは変異していて感染し易い。以前より重症化しづらいので隠れコロナ感染者も多いはず」と言っている。思い返すと、コロナ禍の時期にはコロナも風邪もインフルも罹らなかった。自分はコロナ禍以降、うがい、手洗いは欠かさない。それが功を奏していると思う。コロナもインフルも、誰でも感染対策はとれるのだ。ただ疎かになっているだけ。幸い年末年始に9連休がある。国民全員がコロナ禍を思い出し、うがい、手洗い、マスクを徹底し、外出を控えれば、コロナ・インフルを断ち切る奇跡が起きるかもしれない。
鴻海傘下で再建したはずのシャープが再崩壊し、未だに再浮上する気配は無い。シャープは町田社長時代に液晶テレビの亀山モデルで一世を風靡した。図に乗って堺に大工場を建設したが、中国や韓国の安価液晶台頭により競争力を失った。その結果、堺工場が重荷になり赤字に転落。鴻海に買われてしまった。でも、鴻海から来た戴正呉社長が債務超過の解消等により、見事にシャープ再建を成し遂げた。ここまでは良かったが、後が悪かった。戴社長は、日の丸液晶に拘った。JDI白山工場を買収し、残存者利益に舵を切ってしまった。液晶ディスプレイを生産する堺工場の運営会社SDPも完全子会社化した。これが再崩壊の引き金になったと言われている。シャープと言えば、先行者利益が経営理念だった。シャープの創業者である早川徳次は常に「他社がまねしてくれる商品をつくれ」と口にし、当時のシャープには独創性を重んじる社風が根付いていた。シャープが再生するには原点に戻るしかない。有機ELにはまだ望みはある。KDDIとの人工知能向けデータセンター運営にも望みはある。要は如何にシャープらしさを導き出せるかだと思う。
多才な能楽師である安田登が「うたで読む日本のすごい古典:安田登:講談社」で、和歌の素晴らしさを語っている。和歌はミュージカルにおける歌のような存在で、何度か読み、うたってみて、和歌を「体に染み込ませ」ていくと、それまで無味乾燥だと感じていた古典文学が、彩り豊かなキラキラとした世界に変わりうると言う。中でも面白いと感じたのが「枕詞」についての記載だ。枕詞を脳内ARと呼んでいるという。拡張現実ARとは、現実の風景の上にバーチャルなものを重ねて見るような技術を指す。つまり、枕詞を聴くだけで、情景が脳内に浮かび上がる。例えば、枕詞「久方の」と謡い出すと、そこに「空」や、そらに浮かぶ「月」や「天女」などが出現する。その中から、たとえば「天女」をバーチャルな手でつかんで自分の中に入れる。そうすると「天つ少女の羽衣なれや」という謡が出てくるという。算盤を習った人が暗算するとき、空中にバーチャルな算盤を置いて暗算をするのも脳内ARなのだ。枕詞をウィキペディアで調べると、何と200以上もあるのだ。せめて2~3は、使い熟せるようにしたものだと思う。
今年も1年がアッという間に過ぎ去ろうとしている。もうすぐ正月だ。正月と言えば、昔は百人一首で遊んだものだ。でも、今では坊主めくりをする子供すらいない。そんな時「百人一首がよくわかる:橋本治:講談社」が目に留まった。面白い現代語訳で有名だ。自分が子供の頃にこの本があったら、もっと百人一首を好きになっていたかもしれない。百人一首の最初の歌の作者は何故天智天皇なのかが書いてある。歌は「秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ」で、現代語訳は「秋の田の刈り入れ小屋はぼろぼろでわたしの袖は濡れっぱなしさ」だ。大昔の天皇はぼろぼろの小屋に寝泊まりして稲刈りをしてたのかという気分になる。ところが、伏線があると言う。天智天皇が死ぬと壬申の乱が起きて、天智天皇の息子の大友皇子と、弟の天武天皇が争う。結果は天武天皇が勝って、奈良時代の終わりまで天武天皇の子孫が天皇になる。しかし、その系統が絶えて、再び天智天皇の孫が天皇になる。それが、平安京を造った桓武天皇の父で、そのため天智天皇は「平安時代の天皇の先祖」という扱いを受けた。だから、百人一首の最初が天智天皇になるのだと言う。因みに、著者は「昔の天皇はこういう苦しい労働を体験していてくれたんだという願望の元に、作者として天智天皇?との名が付けられたのだろうと憶測している。時代背景も考慮すると、実に奥が深い。
三菱UFJ銀行の支店の貸金庫から十数億円超の顧客の資産が盗まれた。何と犯人は貸金庫の鍵の管理者だったという。三菱UFJ銀行は「人事の見誤りではない。少し管理が不十分だった」と釈明したが、釈明になっていない。銀行の貸金庫の安全性は絶対的なものだったのに、根底からひっくり返された。信用第一の銀行業にとって、絶対にあってはならないレベルの事件なのに、反省がなさ過ぎる。一方で、三菱UFJ銀行の副支店長が強要未遂罪で起訴された。副支店長が6代目山口組組長の「司忍」などと騙り、顧客企業を脅していた事実が発覚した。貸金庫の窃盗よりも質が悪い。週刊文春はこの他にも、高齢富裕層へのハイリスク商品を売るための研修資料の存在とか、経営トップらが立て続けに軽井沢の物件を購入している実態や、暗雲が垂れ込める4トップ交代人事まで企業体質の実態を報じている。魚は頭から腐るというが、この諺は三菱UFJ銀行のためにあるようだ。これを機に、三菱UFJ銀行は魚頭腐銀行とでも行名変更した方が良い。
ホンダ・日産が統合へとの報道。持ち株会社を設立し将来的に三菱自動車も合流するという形で世界3位の自動車メーカーとなる筋書きだ。でも、二流、三流、四流のメーカーが合流してたからと言って一流になれるのだろうか。ホンダ・日産の関係は、3月に提携検討から始まり、8月には協業の覚書となり、今回は経営統合まで一気に進んだ。でも、日産の業績は赤字に陥った。内田社長は「稼げる車がない」と発言し、匙を投げている。だからといってホンダに日産を蘇させる能力は無い。元々両社が統合したからと言って再生の道など無いのだ。偶々、鴻海が日本政府に日産を買収出来ないかと声を掛けたのが引き金だ。鴻海は、米アップルのiPhoneを受託生産している。ビジネスモデルはCDMS(設計・製造受託サービス)だ。iPhoneと同様にEVでもCDMSを強化したい考えた。そこで窮地に陥っている日産に目を付けた、ということだろうと思う。ホンダ・日産の統合はビッグニュースだが、風が吹けば桶屋が儲かるの諺を彷彿とさせる。失敗するに決まっている。
経産省の有識者会議が、国の中長期のエネルギー政策の方針となるエネルギー基本計画の改定案を公表した。福島原発事故以降、政府は原発依存度を可能な限り低減させる方針を取っていたが、原発を推進する方針に大転換した。確かに、現在の日本の電力は火力が7割を占める。脱炭素から言っても、コストの面から言っても、問題はあるのが現実だ。だからといって、原発を推進すべきなのだろうか。日本は、福島原発事故で現地の人は故郷を失い、原発安全神話も完全に崩壊した。その後、安全強化対策がとられたとはいえ、まだまだ不十分だ。能登地震では、大きく報道されていないが志賀原発があわやの危機に陥った。佐賀の玄海原発では落雷により、オフサイトセンターが機能不全に陥った。原子力規制委員会は、一時は機能していたが、今では原発推進派が占め機能していない。更に、経産省の有識者会議も原発推進派で占められている。このまま進めば、第二の原発事故が起きることは間違いない。今こそ、地熱、洋上、水力等の発電方式を見直し、改良する時期が来ていると思う。
OECDが発表した「国際成人力調査」で、日本は前回に引き続き世界トップ水準となった。しかし同じ世界トップのフィンランドが「世界幸福度ランキング」でもトップとなっているのに、日本は先進国の中で最低ランクの47位という状況にある。国際成人力調査とは、成人が実社会で生きていく上で必要な総合力を成人力と定義し、それを読解力、数的思考力、問題解決能力の3分野について数値化して順位付けしたもの。日本とフィンランドの違いは何なのだろう。「フィンランドの高校生が、学んでいる人生を変える教養:岩竹美加子:青春新書」によると、フィンランドの学校は「自分の頭で考える」ことを教えるが、日本の学校は「自分の頭で考えず丸暗記することだけ」を教えているとのこと。山田進太郎D&I財団石倉秀明COOは「日本人が仕事が出来ないのは、学生を採用する管理職が高度人材の使い方を分かってない。学歴と仕事のミスマッチが起きている。管理職こそリスキリング必要だ」と指摘している。また、日本生産性本部が発表した2023年の日本の時間あたり労働生産性は、OECD加盟の38カ国中29位だった。自分の頭で考える人材をフルに活用することが出来れば、自ずから世界幸福度ランキングも上がっていくに違いない。
自民と立民が、使途公開が不要な政策活動費を全面廃止することで合意した。これで政治と金の最大のブラックボックスが消滅する。今後政党や政治団体の支出はすべて使途の公開が必要となる。あれほど廃止に抵抗していた自民をねじ伏せたのは、少数自民に対し野党が一致団結した結果といえる。やっと正常な国会に戻ってきたと思う。今後は、残る4法案の成否に注目だ。企業・団体献金の禁止法案に加え、国会議員関連の政治団体から、政治資金の支出の公開基準が緩い後援会など「その他の団体」への資金移動を制限する法案や、国会議員が政治資金を親族に引き継ぐことを制限する法案などだ。企業・団体献金については、来年3月末までに結論を出すことと先送りした。このブログ「企業・団体献金禁止の攻防」にも書いたが、野党は企業献金か公的助成かの選択を迫り、企業献金廃止に持ち込むべきだと思う。
環太平洋経済連携協定TPPに英国が加わった。英国の加入によって人口5億8000万人、世界の国内総生産GDPの15%を占める経済圏となった。地理的にもアジア太平洋から欧州に枠組みが広がった。日英は既に経済連携協定EPAを結んでいるので、今回の協定で日本からの輸出では精米やパックご飯などの関税が撤廃され、英国からはバターや脱脂粉乳などの関税が下がる。英国には、今回の加入によって長期的には英経済に年約3900億円の押し上げ効果があるという。協定はモノの関税引き下げだけに留まらず、サービスや投資の自由な取引を促進する。保護主義的な動きがある中で、英国の加入により自由でルールに基づく貿易といった価値観を日本と共有する仲間が増えたことは価値が有る。TPPには更なる拡大が求められている。だが、米国はトランプ時代に保護主義を徹底し撤退した。一方中国は加入を申請しているが、TPPの高度な加盟条件を満たせる見込みは現時点では殆ど無い。中国の加入申請は、台湾の加盟を阻止し、マレーシアなどアジアの加盟国に対するTPPの求心力を弱める狙いがあるからだといわれている。いよいよTPPは米中を除く経済大圏に生まれ変わろうとしているようだ。
自民、公明、国民の3党がガソリン税の暫定税率廃止で合意した。国民が自民に予算承認をエサにトリガー条項凍結解除を迫っていたのに、どういう訳か、自民がもっと大元の暫定税率廃止を容認した。1リットルあたり53.8円のうち上乗せ分が25.1円を占める。暫定税率廃止でガソリンは175円が165円程度になる。しかし、年収の壁と同様に約1兆5000億円の減収となり、地方財政への措置が必要だ。そもそも、暫定税率とは1973年からの第7次道路整備計画で、予算確保の副次的な財源として始まったものだ。それが2008年に政府と自民が道路特定財源の一般財源に変えてしまったのだ。この時点で、暫定税率の存在意義が曖昧になり、暫定税率という名の恒久税率に変身したのだ。日本の税はこの種の変身が多い。トリガー条項も、本来はガソリン価格を安定させるための措置だったが、東日本大震災の復興財源に変身させられてしまった。日本の税制は歪みが大きい。食いついたら離さない財務省の体質もあるが、それを制しきれない政治に根本的な問題があると思う。
シュウカツを始めた。シュウカツと言っても就活ではない。終活の方だ。まず手始めに使っていない銀行口座を解約することにした。義母が亡くなった後、手続きなどで難儀した。自分の子供たちに同じような面倒を掛けたくないと思ったのが、終活の始まりだ。50年くらい前、会社の給与が銀行振り込みになり、転勤先でスルガ銀行の口座を開設した。でも、もう20年以上使っていない。解約するには開設した支店に行けば良いのだが、遠すぎる。開設支店に行かなくても地元の取引銀行で解約出来ることを知った。取立という方法だ。紆余曲折はあったが、なんとか手続きまでは進んだ。三井住友銀行も解約することにした。1年前に新ビルに開店した支店だが、無用に広い通路があったりしてレイアウトが悪い。窓口の周りは、OLIVEのポスターが100枚以上びっしりと貼ってある。選挙事務所じゃあるまいしと思った。非常にセンスの悪い銀行だった。それでも手続きはスンナリと済んだ。まるで自分が手続きをしたように書いたが、現実は違う。全てカミサンが調べ、準備して、折衝したのだ。自分は、身分証明書を見せるだけの役割だけだった。何年後かに自分が認知症になっていたらと思わせる経験であった。
アフリカのコンゴで、謎の感染症が発生し、多くの死者が出ているとのニュース。まだ名前もつけられておらず、暫定的にDisease X(疾病X)と呼ばれている。激しい頭痛や高熱、下痢や嘔吐、呼吸困難や貧血など、インフルエンザや新型コロナに似たような症状だが、恐ろしいのはその死亡率だ。感染者の半数以上が5歳未満の幼児を中心とした子どもで、死亡率は何と50%。しかも、発生が確認されてから1カ月が過ぎたが、未だに感染が細菌かウイルスかも分かっていない。コンゴの首都キンシャサの人口は、東京を遥かにしのぐ約1,700万人。感染が広がれば、世界的なパンデミックになる恐れがある。コンゴでは半世紀前に人に感染するサル痘が初めて報告された。それが現在でも感染が拡大している。致死率の高さと言えば、感染の発見が遅れると90%が死亡する「エボラ出血熱」が有名だ。この名前は、1976年にコンゴのエボラ川の沿岸の村や町で初めて感染爆発したことに由来している。今こそ、アフリカへ世界的な権威の医学者を投入し、奇病を元から絶つ必要があると思う。
野党が要求する企業・団体献金の禁止に対し、石破首相は「憲法21条に抵触する」との認識を示したことが波紋を広げている。憲法21条は「集会、結社および言論、出版その他一切の表現の自由」の保障を定めている。石破は憲法21条を「企業も表現の自由は有しているので、献金も自由だ」と解釈したようだ。でもそれは権力者にとって都合の良い憲法解釈であり、権力の濫用と言える。高橋洋一嘉悦大教授が世界事情を述べている。「米国や英国は企業献金はOKだけど、公的助成がほとんどない。要は両方もらうなよ、ということ。フランスは企業献金は全部アウト。それで公的助成がそこそこある。日本は公的助成が高くて世界のトップクラス。それで企業献金も緩いというのはいいとこ取りしすぎている」と。野党は、企業献金の世界事情を元に、政府に迫るべきだ。しかし、迫り過ぎると己のクビを絞めかねないと考え、世界事情を伏せているのかもしれない。
クーリエ・ジャポンが最近のブータン事情を伝えている。ブータンと言えば、2011年にジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュクが王妃と共に来日し、歓待されたことを覚えている。ブータンは、国の発展を国民総幸福量GNHで計測する取り組みから「幸福の王国」として知られている。当時マスコミは、幸福の王国ブータンと囃し立てた。GNHとは、心理的幸福、健康、教育、文化、環境、コミュニティー、良い統治、生活水準、自分の時間の使い方の9つの構成要素から成っている。ところが、幸福の王国が不幸の王国に変わってしまったという。ブータンの主要な収入源のひとつが観光業だが、コロナ禍以降観光客が激変してしまった。若年層の失業率は30%で、国民の8人に1人が貧困状態にある。経済的に失敗しただけでなく、世界報道自由指数も33位から90位に下がってしまった。そのため、現在のブータンはかつてないほど国民の海外流出が高水準で続いている。2022年は、人口の1.5%が仕事と進学目的でオーストラリアへ移住してしまったのだ。ブータンから難民としてオーストラリアへ渡った著者は「GNHのアイデア自体は良いが、ブータン国民すべての幸福と人権に対する政府の取り組みを反映したものではない」と言っている。ブータンでは、どんなことであれ国王や政府の意向に逆らうことは出来ない。構成要素に経済と国王・政府を加味した国民総幸福量2.0版が必要だ。
父子2代にわたり半世紀以上続いたシリアのアサド政権が崩壊した。アサド政権の悪行は数々ある。石油生産はかつての20分の1の日量3万バレルまで落ち込んだ。その一方で国家を麻薬の製造拠点に変え、麻薬の輸出国として周辺国を悩ませている。富を一族に集め国民を弾圧し、平和的な反政府デモを弾圧するため化学兵器を使った。国内外に1300万人が避難し、欧州で難民危機を引き起こした。結局、残忍な統治が腐敗と経済の空洞化を招いた。アサド政権が半世紀も続いたのは、ロシア、イラン、ヒズボラの支援があったからだと言われている。でも、ロシアはウクライナ侵攻で疲弊し、イランはガザ支援で一杯になり、ヒズボラはイスラエルにやられてしまった。更にシリア軍にも見限られてしまった。最早ロシアへ亡命するしか道は残されていなかったようだ。亡命後、シリア国民は歓喜の声を挙げている。良かったと思う。でも、今後シリアに民主的な政治が生まれ、育つのかは分からない。ただ、アサド政権が崩壊したことは、間違いなく良い兆候だと思う。
2025年度から、風邪がインフルエンザやコロナと同じ5類感染症に分類されることになった。その理由は、厚労省が風邪の発生状況を把握することで、新たな呼吸器感染症の早期検知対応を目指すためだ。WHOが、急性呼吸器感染症の調査は次のパンデミックにつながり得るので、世界各国で調べてほしいと呼びかけたことに対応したもの。風邪は数百種類のウイルス・細菌が原因とされている。風邪と呼んでいる症状は、現在の感染症法では位置付けされていない。WHOは咳とか呼吸の苦しさがある38度以上のみを報告すれば良いとは言っているが、風邪は発熱だけでなく咳や鼻詰まりなどの症状がある。風邪が5類になっても、医療費も治療も自己負担も変わらない。変わるのは医療機関が厚労省に報告する負担だけだ。これを機に、診療すると自動的に情報が厚労省に届くようデジタル化を進めることが必要だ。第2のコロナを早期に検知出来ることになるはずだ。
「とてつもない数学:永野裕之:ダイヤモンド社」の「円周率とあなたの誕生日」が面白い。現在、円周率は小学校5年生で初めて習うことになっている。授業で「直径×円周率(3.14)=円周の長さ」の計算を学ぶのだ。自分が習った時代は、円周率=3.14だったが、ゆとり教育で円周率=3となってしまった。あまりにもゆとりがあり過ぎる。困ったものだと思っていたが、ゆとり教育も見直され、今では円周率=3.14に戻っている。円周率は3.14159…と小数点以下に不規則な数字が無限に続くことで知られている。この著者は、この無限に続くという性質は数学における最も神秘的で魅力的な現象のひとつだと指摘している。無限と言うことは、終わりが無いのだ。それ故、数え切れないほどの可能性を秘めているという。例えば、誕生日が円周率の中に隠されているという。誰の誕生日でも必ず存在するという。Irrational Numbers Search Engineで調べることが出来るという。試しに自分の誕生日1946年12月23日の存在を調べてみた。すると、数値文字列19461223は、Piの16,368,414桁目の10進数に表示されますとの答え。円周率は3.14という自分とは関わりの無いものと思っていたが、誕生日が16,368,414桁目に有ることを知り、少し胸が熱くなった。
公益社団法人である日本PTA全国協議会(日P)に内閣府の監査が入った。以前から運営上のゴタゴタが続いている。内閣府は「不適切な状況が確認され、公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力に疑義が生じている」として報告を要求した。日Pは内閣府には報告したが、その内容を協議会メンバーには明らかにしていない。一事が万事で、ガバナンスは崩壊している。PTA組織は、下部に学校単位で組織されるPTAが加盟する市区町村単位の連合会があり、その上部組織である都道府県・政令市単位の協議会によって構成されるのが日Pだ。約700万人の児童生徒数当たり10円を会費として集めている。資金が豊富でトップのやりたい放題なのだから、不健全な経営になるのは当然だ。内閣府は、是正されなければ公益認定を取り消すこともあるとしている。現に、さいたま市や千葉市の団体が退会し、複数の団体が退会を検討中だという。あまりにも腐りきっている。一度公益法人を取り消し、トップを総退陣させ、会費を大幅に減額することから始めなければなさそうだ。
電気自動車EVは、ガソリン車と較べてCO2排出量を大幅に削減出来るというのが定説だ。だが、EVの製造過程ではガソリン車よりもCO2を多く排出する。火力発電に頼っている日本では、EVとガソリン車のCO2排出量が同列に並ぶ「CO2損益分岐点距離」は約11万kmとの計算がある。即ち、EVは11万km以上走行しなければ、ガソリン車よりCO2排出量が少ないはと言えないのだ。ガソリン車は通常11万km程度で廃車になるから、ガソリン車が劣っているとは決して言えないという見方がある。ところが、世界中の自動車メーカーは中国製EVに押され、縮小を余儀なくされている。特に酷いのが英国だ。英国では2024年からEV規制が開始された。乗用車の22%をEVまたは水素燃料電池車とすることが義務付けられ、2030年には80%に、そして2035年にはガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の新車販売が完全に禁止される。規制に違反した場合、メーカーに非EVの乗用車1台ごとに最大286万円の罰金が課せられることになっている。世界の自動車メーカーが英国市場からの撤退を余儀なくされるのは必至だ。先進的取り組みが、正しいとは限らない典型例と言えそうだ。
韓国のユン大統領が、北朝鮮や反国家勢力の脅威から国家を守るという建前で突然3日夜に非常戒厳を宣布した。でも、今朝には戒厳令が解除された。ところが、昨夜機敏に誤反応した日本の政治家がいた。維新の代表をクビになったばかりの馬場前代表だ。馬場は真夜中に「韓国で起こることは日本でも起きる可能性がある。憲法改正し緊急事態条項を整備すべきだ」とツイートした。ところが、今朝「逆だよ。憲法を改正して緊急事態条項を整備すれば、日本も韓国と同じことになる。馬場は酔っ払いか」とのツイートが大勢を占めた。更に、馬場は「緊急事態条項という単語を出せばパニックになる方が多いですが権力の暴走を止める装置であると理解して下さい」と持論を展開したが、自民党改憲案の緊急事態条項における「緊急事態」は、国会の事後承認で宣言できるうえ、韓国のように議会決議による強制解除もできないのだ。政治・政情に熟知していない。維新の底が知れてきた。残念。
国民民主党の公約した「103万円の壁」が迷走している。年収の壁103万円が設定された1995年当時の最低賃金が611円だったことから、最低賃金が1.73倍の1055円に増えた現在でいえば、壁の高さは1.73倍の178万円であるべきだという考えに基づいている。当初、立民は103万円の壁よりも130万円の壁の方が重要だと主張していた。恐らく、国民民主も103万円を超えた時の減収だけを問題にしていたに違いない。ところが、壁を178万円にするということは、その収入まで所得税も社会保険料も払わなくて良いということになる。財務省が、178万円になると8兆円の減収になると試算した。そして、問題は「103万円」か「8兆円」かの議論にすり替わってしまった。当初の国民民主の目的を達成するには、103万円を超えたところの減収部分を何らかの手で補い、減収しないようにすることだったはずだ。玉木代表は「8兆円は消費増で取り戻す」と言い逃れしているが、無責任だ。現代は、共稼ぎが主流になり3号被保険者制度の廃止も取り沙汰されている。石破も玉木も財務省も、その答えを見出せない。所得税、社会保険料、年金に精通したオピニオンリーダーの出現が望まれる。
2024ユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に「ふてほど」が選出された。トップ10には、50-50、裏金問題、新紙幣、初老ジャパンなどが入った。「ふてほど」とは、現代と昭和をタイムスリップする金曜テレビドラマ「不適切にもほどがある」だ。阿部サダオ主演の面白いドラマだった。でも、選考理由はドラマそのものではなく「今年の世相が不適切にもほどがある」からだろう。この賞には「流行語大賞に選出されるとその芸人は消える」というジンクスがある。なんでだろう~、って言うじゃない…/…残念、フォーー!、そんなの関係ねぇ等々、トップ10選出のイッパツ芸人は消える運命にある。一方で、50-50は変わっても大谷フィーバーや裏金問題は来年も続くのだろう。来年は「ふてほど」が入賞しないことを願うばかりだ。
政府は今年度一般会計の補正予算案を14兆円規模と閣議決定した。補正予算額と言えば、通年1兆~5兆円程度に収まっていたが、コロナ禍で数十兆円規模に膨れ上がった。しかし、コロナが治まった今年も補正予算額は収まる気配が無い。コロナ禍で定着したバラマキが止められないのだ。財源は国債の発行でまかなう方針なのだから、財政健全化の流れに逆行している。でも、政府は今年の経済財政運営の指針「骨太の方針」に、コロナ禍以降に膨らんだ歳出を「平時に戻す」と明記していた。かけ声倒れとなっている。そこで思い出すべきだ。政府は来年度に国・地方の財政の健全性を示す基礎的財政収支を黒字にする目標を掲げていたのだ。財政健全化をアピールするため当初予算の規模を抑える一方、補正予算を第2の財布として扱っているのが透けて見える。石破首相は衆院選期間中に、補正予算を昨年を上回る規模にすると明言した。これが規模ありきの源になったのは間違いない。財政健全化の流れを妨害するのが、国政選挙であることは悲しい現実だと言える。