エピゲノムについて

親の悪い生活習慣は子や孫に遺伝するか?という研究分野がある。エピゲノムだ。親の容姿・性格が子に遺伝するというのは常識だ。常識と言うより、実際に親子は似ている。その理由を現代ではDNAという概念で説明している。ではDNAが一緒だったら、皆同じかというと、そうではない。同じ親から生まれた兄弟姉妹でも、それぞれ違うのが当たり前だ。何故違うのか、それを研究するのがエピゲノムということらしい。ヒトの細胞は全て同じ遺伝情報を持っているのに、皮膚や目などさまざまな組織に分化出来る。それは、DNAから必要な情報を読み出すエピゲノムという付箋のような仕組みがあるからだ。例えば、シトシンという塩基にメチル化と呼ばれる化学修飾が起こると、その遺伝子の働きは抑制される。塩基の配列は変わらなくても、遺伝子の働きのオン・オフが決まるのだ。このエピゲノム情報は環境の変化の影響を受ける。では、こうしたエピゲノム情報は次世代に遺伝するのだろうか。哺乳類では、卵子が受精した後などに、化学修飾が消えるリプログラミング(初期化)という現象が起こる。このため、エピゲノム情報は子孫に引き継がれないと考えられてきた。しかし、高橋悠太熊本大特任准教授が、子孫に引き継がれることをマウスで実証した。精子や卵子などの段階ではメチル化が消えていたが、受精卵の着床後には戻っていたことを確認したのだ。何らかの記憶装置「エピジェネティック・メモリー」があるのではないかと解明を目指しているという。自分は親に似て、高血圧症でかつ痛風を経験したことがある。恐らく、メチル化が引き継がれたに違いない。でも、努力次第でメチル化は外せるのが一縷の望みだ。つまり、遺伝しても治せるということだ。