侮辱罪と危険運転致死傷罪

インターネット上の誹謗中傷対策で「侮辱罪」を厳罰化する改正刑法が、参院本会議で賛成多数により可決、成立した。ネット上で誹謗中傷され自殺した女性プロレスラーの母親が、ネット上の中傷被害の深刻な実情を社会に訴える活動を続けた。それが法改正に結びついた。侮辱罪と危険運転致死傷罪は、成立過程が似ている。危険運転致死傷罪は、東名高速で酒酔い運転のトラックに追突され家族を亡くした母親が飲酒運転の撲滅を訴え続けたことが契機で成立した経緯がある。道交法の厳罰化は、その後交通事故低減の特効薬になり素晴らしい効果を発揮している。では、侮辱罪による効果はどうなるだろうか。これを契機にネット上の誹謗中傷が低減するのは間違いない。女性プロレスラーのような悲劇は激減するに違いない。しかし、一方で侮辱罪の悪用も危惧される。まず悪用するのは悪徳政治家や質の悪い著名人だろう。侮辱の定義は曖昧だ。屁理屈をつけて、侮辱罪を楯にとって反撃するに違いない。自分は侮辱罪の厳罰化は間違っていると思う。ネットの誹謗中傷は、投稿者の即時開示等で対応すべきだ。言論の自由を奪う法改正には問題がある。