トリチウムへの決断

福島原発事故の汚染処理水トリチウムの扱いが愈々大詰めを迎えている。水素には同位体がある。原子核が1つなのが通常の水素だが、原子核1つと中性子1つから成るのが重水素で、原子核1つと中性子2つから成るのがトリチウムだ。水素同位体には質量数が4から7の同位体もあるが、いずれも半減期が極めて短く不安定で実験室外には存在しない。化学的性質は最外殻電子の数によって決まり同じ挙動を示すので、水素とトリチウムを分離するのは極めて困難だ。分離する方法は無いのが現状だ。トリチウムは放射性物質で半減期は12.32年。天然には微量しか存在しないが、誰でも人体にも50ベクレル程度のトリチウムを保有している。分離が出来ないので現在も世界中の原発がトリチウムを放流している。福島のトリチウム水も希釈して放流するしか処理方法は無い。福島の漁業者はトリチウム処理は放流しかないことを理解しているという。でも現実的な最大の問題は漁業への風評被害だ。今こそ、政府が一丸となってトリチウムへの理解を啓蒙し、放流の道を拓くしかない。でも、原発を否定する諸刃の刃にもなる。従って、脱原発の道しか残されていない菅政権は、決断すべき時を迎えていると思うのだが。