社会人基礎力の曲解

ある調査によると、日本の修士・博士号取得者数が減少しているという。過去10年間の修士・博士号の取得者数は、米国や中国では2割も増加しているのに、日本では1割以上も減少している。給料にしても、米国では博士/学士の比が1.7倍だが、日本では1.2倍だ。年の差を考えれば、給与差は全く無い。これからの企業は、昔ながらの技術だけでは生き残れない。だから、博士号の専門性を生かし最先端を走らなければいけないのに、何故日本では専門性が軽視されるのだろう。問題の一つは、経産省の「社会人基礎力に関する研究会」が報告した「社会人基礎力」の解釈にあると思う。この社会人基礎力とは、人との関係を作る能力、課題を見つけ取り組む能力、自分をコントロールする能力だ。だが企業は採用時に人との関係を作る能力であるコミュニケーション能力を偏重し過ぎている。専門性より人柄だという訳だ。結果として学生は博士課程などには行かなくなる。この構図は「ゆとり教育」の失敗とそっくりだ。元々の狙いが現場で曲解され生かされなかった。文科省の失敗を、今度は姿を変えて経産省が繰り返している。残念。