嗚呼、ボジョレー・ヌーヴォー

もうすぐボジョレー・ヌーヴォーの解禁日だ。嘗ては初冬の風物詩だった。酒屋は勿論のこと、デパートやスーパーでも店頭の一等地に堆く陳列され、売り子の声が街頭を賑わしていた。でも、今ではそれが夢だったかのようにひっそりとしている。あの騒ぎは何だったのだろうかと思う。当時はワイン通と自称する人がボジョレー・ヌーヴォーを絶賛していた。それにつられ自分みたいなワイン音痴がボジョレー・ヌーヴォーを買い求めたものだ。ボジョレー・ヌーヴォーはラベルが華やかで綺麗だ。自分の購入の選択肢はそのラベルにあったことを思い出す。何故これほどまでに廃れてしまったのだろう。一つは、ワイン通のテイストレベルが上がったためだろう。ボジョレー・ヌーヴォーは新酒だから、ワイン本来のテイストではない。舌が肥えれば当然価値が下がっていくということだろう。もう一つは、毎年のキャッチコピーの怪しさだろう。毎年「10年に一度」とか「豊かな果実味と程よい酸味が調和」とかが繰り広がれる。これだけ続くと誰も信用しなくなる。更なるダメ押しは、商社の販売意欲が冷めたことだ。人気が下降すれば、脱兎の如く逃げていく。ボジョレー・ヌーヴォーの廃れは、本物のワイン通が育ってきた裏返しかもしれない。