一角千金、通抜厳禁

「角がワープした」なんて聞いたことがない。我が耳を疑った。トッププロ棋士同士の将棋の対局での出来事だ。菅井前王位の角が相手のと金を通り抜けて、その先に行ってしまった。勿論即反則負けになった。その時の対戦相手が橋本八段。橋本八段といえば、数年前のNHK杯の準決勝戦のことだ。自分はその放送を見ていた。橋本が終盤に入ったところで熟慮の末歩を打つと、相手が「アッ」と言った。すかさず橋本も「アッ」と言った。二歩だったのだ。将棋には色々な反則負けがある。二歩、打ち歩詰め、筋違い、自滅手、二手指し、時間切れなどの他にまだまだある。橋本八段はその後しばらくの間、色紙に「一歩千金、二歩厳禁」と揮毫していたという。さて菅井前王位は、これから生涯、色紙に「一角千金、通抜厳禁」とでも揮毫するのだろうか。戒めを書き続ければ、大成して数多くのタイトルを獲得し一攫千金も夢ではないかもしれない。