当事者と傍観者

久々に胸がスカッとするボクシングの試合をテレビ観戦した。井上尚弥の3階級制覇をかけたWBA世界バンタム級タイトルマッチとWBC世界ライトフライ級王者の拳四朗の防衛戦。13戦13勝7KOの戦績を誇る拳四朗の相手は、1年前に世界タイトルを奪ったガニガン・ロペス。手強いと思ったが見事なボディブローで2回KO勝ち。拳四朗は滅茶苦茶強いと思ったが、井上の方がもっと凄かった。井上の相手は、10年間も負けたことの無いライアン・バーネット。井上に較べ、身長は顔の長さほど違うし、リーチは10cmも長いし、体重差は5kgもある。柔道で言えば無差別級の対戦とも言えそうだ。ところが、開始早々井上のパンチが爆裂。1回2分を待たずにバーネットがギブアップ。井上が圧倒的な強さを見せた試合だった。だが、井上は試合前は相当ナーバスになっていたようだ。でも、テレビ観戦者には、そのような状況は伝わってこない。勝つべくして勝ったとしか映らない。こういう所の当事者と傍観者の違いが面白い。これこそがスポーツの醍醐味だと思う。更に思いを広げると、どの世界でもこの立場の違いは限りなく存在するものだと熟々思い至った次第。