月の水

今から65年くらい前、小学生に上がる前のことだ。天の川が見える夜に母と散歩したことがある。母は「お星様は一緒に歩くのよ」と言う。確かに自分が歩くと、星も付いてくる。ゆっくり歩くと星もゆっくりと、早足で歩くと星も早足に。不思議だなと思った。母は「お月様にはウサギさん住んでいるの」と言う。確かに、ウサギが杵を突いているように見える。当時本当にウサギが住んでいると思っていた。あの時から65年も過ぎると状況は変わる。あのウサギの下には大量の氷が眠っているかもしれないとのニュース。東北大の研究チームが、地球に届いた月の隕石に、水がなければ生成しない鉱物「モガナイト」が含まれていることを初めて突き止めたとのこと。モガナイトの生成には、高い圧力とアルカリ性の水の蒸発が必要。それから推測すると、月面に大量のアルカリ性の水を有する隕石が衝突し、月表面では太陽光により水が蒸発しモガナイトを生成し、温度の低い地下では水が氷として留まったとのこと。では、その場所がウサギの下であることを如何に特定したのだろうか。モガナイトを含んだこの隕石は、約1万7千年前にアフリカ北西部の砂漠に落下した隕石で、ウサギに見える月の「プロセラルム盆地」から宇宙空間を漂った後に地球に落下したものと言われているからという。何だか怪しく見えてきた。でも、宇宙は夢を語るものだ。月で水を自給出来れば、将来、居住する際の飲料水や水素燃料の原料として期待出来る。この研究の評価は、将来月に居住する人の判断に任せることにしよう。