リスク評価は安全サイドで

広島高裁が伊方原発について運転差し止めの仮処分を下した。福島原発事故後、原発の運転を差し止める高裁の判断は初めてで、画期的な判決だと思う。伊方原発は、30km圏内にある対岸の大分県の住民避難計画が問題になっていたと思っていたが、そうではない。何と問題は阿蘇山の噴火なのだという。広島高裁は、新規制基準の合理性は認めたが、火山の安全性審査の内規「過去最大の噴火規模を想定する」を厳格に適用した。伊方原発は阿蘇山から130km離れているが、9万年前の噴火規模であれば、火砕流が伊方原発に到達する可能性がある。火山の大規模噴火に対する四国電力の想定が甘く、規制委の審査も不十分だと指摘した。阿蘇山から等距離の位置にある川内原発では、1万年に1回程度の大規模噴火は、安全上考慮すべき社会通念にはなっていないと運転を容認したケースもある。要するに火山の噴火リスク評価を巡っては、司法の判断がバラバラなのだ。だが、思い出してみて欲しい。大津波による福島原発事故が発生した時は東電も政府も「想定外」と言い張った。だが、過去の事実を調べてみると、間違いなく「想定内」の出来事だった。その過去が100年前だろうが1万年前であろうが、事実は変えられないし、年限を切って安全の境を決めることなど不可能だ。たとえ何万年前であろうが、安全サイドで判断すべきものだと思う。自分は広島高裁の判決が社会通念になることを望んでいる。