人間にしか出来ない仕事

囲碁でコンピュータが人に勝つのは、10年以上先のことというのがつい最近までの囲碁界の認識だった。ところが、グーグルのAIアルファ碁が中国の世界最強棋士との三番勝負で3連勝を果たした。囲碁は将棋やチェスに比べて手順が長い。変化の数は、チェスが10の120乗、将棋が10の220乗に対し、囲碁は10の360乗。将棋に較べて140桁も多くの変化があるということだ。囲碁の変化は無限大といえる。IBMのディープブルーがチェス世界チャンピオンに勝ったのが1997年。将棋ソフトponanzaが現役プロ棋士に平手で勝ったのが2013年。そして4年後の今年グーグルのアルファ碁が囲碁で世界一になった。AIが進化すると、将来AIが人間を支配するのではないかとか、AIが暴走したらどうするのかと懸念する人は多い。アルファ碁を開発したグーグル傘下のベンチャー企業CEOは「人間との対局はこれが最後になる」とアルファ碁の引退を宣言し、更に「この勝負はAIの勝ちではなく、人間の勝利だ。AIはあくまで人間が使う道具であり、これまで見通せなかった領域に人間を導いてくれるハッブル宇宙望遠鏡のような道具となるのだ」と語ったとのこと。アルファ碁で培ったソフト開発は、既に医療やエネルギー分野への応用に軸足を移し成果を上げ始めている。頗る頼もしい。未来の人間は、人間にしか出来ない仕事をして、人間であることを謳歌することになるのだろうと信じたい。