名門大病院の経営危機

雑誌PRESIDENTによると、首都圏の大総合病院の多くが経営危機に陥っているという。その筆頭が、あの有名な聖路加国際病院。医療の質を数値化し公開と改善に繋げるQI活動を提唱し、全国の病院にその活動を普及させたことにより国際病院連盟賞の最高位賞である会長賞を受賞している。研修医の初期臨床研修施設としても知られ、日本で最も医学生の人気の高い研修先の一つになっている。あの日野原名誉院長でも有名だ。虎の門病院、北里病院も経営に苦しんでいる。日本屈指の名門病院が経営危機に陥る背景には医療制度の構造的な問題があるという。要因は3つある。一つは下げ続ける医療単価。政府は増大する医療費を抑制するために、2年毎に診療単価や薬価を引き下げている。高齢化に伴い患者数が増えるので、診療単価を引き下げるという理屈だ。我が国の医療費は厚労省が全国一律に決めている。だが、田舎と首都圏では土地代も人件費も全く違う。首都圏はコストが嵩むため、医療費を下げ続ければ、首都圏の病院から順次破綻する構図になっている。特に総合病院は患者の少ない診療科を揃えなければならないから更にコストが掛かる。2つ目は首都圏の医師不足。人口10万人当たりの医師数は、首都圏230人に対して四国は278人、九州北部は287人。2割もの差がある。更に偏在が著しい。東京都314人に対し、埼玉県155人、千葉県179人、神奈川県202人。東京だけは医師が多いが、他の3県は南米や中東並みの数字だ。3つ目は看護師の不足。東京都727人、埼玉・千葉・神奈川は600人台に対し、鹿児島・佐賀・長崎は1200人台。厚労省は在宅診療などを強化した地域包括ケアシステムの確立を目指しているが、その際、重要な役割を果たすのが看護師。首都圏の在宅診療など夢のまた夢。机上の空論に過ぎない。日本の進むべき道として、医療費抑制、地方創生等個別の政策は的を射ているが、俯瞰的に判断を下せる人材がいない。せめて、厚労相くらいは基幹病院の存続に、知恵を出してほしいものだと思う。