住吉のラベルの威力

「住吉」を飲んで床に就いてから、昔の記憶が溢れ出してきた。まだ小学校に上がる前、母方の母が亡くなった。当時は家で看取るのが当たり前だった。枕元に親戚一同が並ぶ中、祖母は息を引き取った。その瞬間瞳孔が開き眼が真っ黒になった。すかさず母が「お前が良い子でいないと、かーさんもあーなっちゃうんだからね」と言って泣いていた。かーさんが可哀想と思った。当時は、カメラのある家は珍しく、街頭写真屋なる商売があった。適当に撮って、後日売りに来る。祖母の葬儀が済んで数週間経った頃に、偶々写真屋が自分の写真を売りに来た。ニッコリ笑って自分でもいい写真だと思った。母にせがんで買ってもらった。夕食の時「僕が死んだら、これ飾ってね」と言った瞬間、父の「バカヤロー」という罵声が飛んできた。その時は、何故父が怒り出したのか分からなかった。この他にも、「だっちゃん坊や」という紙芝居屋が来るのを楽しみにしていたこと、水飴を買って、両手で箸を持ってかき混ぜると白く濁るのが面白かったこと、犬に噛まれたこと等々、次から次へと記憶が蘇り、眠れぬ夜を過ごすことになった。住吉のラベルの威力は物凄く、頭の中をリフレッシュさせてくれた。