記憶を掘り起こす「住吉」

テニス帰りに近所のスーパーに寄った。我が家が1週間分の食材を買い求めるいつもの行動パターンだ。カミサンが食材を物色している間に、自分は酒コーナーをぶらり。いつもは何気なく通り過ぎてしまうのだが、一つのラベルが目に飛び込んできた。目が釘付けになった。我が目を疑った。橋の欄干みたいな図柄に「住吉」の文字。忘れはしない。もう60年前の自分が小学生の頃、父が愛飲していた酒だ。昔は酒を量り売りするのが当たり前だった。よく近所の酒屋さんに1合か2合かを買いに走らされたものだ。あまりにも懐かし過ぎて1本購入した。急遽、夕食は日本酒中心のメニューに変更された。当時の自分は子供だったから「住吉」の味は知らないが、これが60年前頃に父が飲んでいた酒なのかと思い感慨深いものがあった。自分が中学の頃家が移転し「住吉」が手に入らなくなった所為か「爛漫」に変わり、その後「菊正宗」に変わり定着した。「住吉」のラベルを見て、当時の記憶が走馬燈のように蘇ってきた。自分が小学生になる前、父は「ゴールデンバット」を吸っていた。よく買いに行かされたものだ。その後「光」に変わり「いこい」に変わった。中学生か高校生の頃は「ハイライト」になっていた。父の酒とタバコで、子供ながらに、生活が少しずつ豊かになっていくのを肌で感じていた。ここ当分は「住吉」を続け、昔の感慨に浸ろうと思う。