TPPと「ア」と「セ」

トランプ次期米大統領が来年1月の就任初日にTPPから離脱することを表明した。選挙公約の反古や修正を続けているトランプだが、どうやらTPPからは本気で離脱しそうな状況だ。TPPの発効条件は、参加国のGDP合計が全体の85%を超える事だが、60%を占める米国が抜けてしまえば、成り立つ訳がない。トランプ表明の前日に、参加11カ国は発効に向けた国内手続きの推進を確認し、安倍首相は「米国抜きでは意味がない」と語り、一致団結してトランプに再考を促す考えのようだ。今まさに風前の灯のように見える。だが、そうではない。大統領選前から米国議会はTPPに反対してたから、元々TPPは成立するはずは無かったのだ。では何故成立するはずもないTPPに日本は拘っているのだろうか。安倍首相は「TPPは米国抜きでは意味がない」と言いているが、本心は「TPPを抜いたらアベノミクスの成長戦略はない」ということだろう。TPPは日本の政治家が最も不得手とする規制緩和の塊なのだから。外部の圧力を使わないと自国の規制緩和が出来ない日本と、たった一人の品性のない次期米大統領が世界の規制をぶち壊す米国の対比が象徴的だ。TPPにかこつけて先延ばししてきたツケが、猛烈なパンチとして戻ってきそうだ。TPP崩壊後、果たして安倍首相はアベノミクスの「ア」と成長戦略の「セ」を発することが出来るのだろうか。