孤高なヘリウム

「水兵リーベ僕の船」とは、原子の周期表を覚えるための呪文でもある。H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Ne。かのメンデレーフが提案した周期表は、今でも確固たるものとして存在している。先日ニホニウムが第113番目として認定されたのは記憶に新しい。一方ヘリウムと言えば相当古い。1番目が水素で、2番目がヘリウムだ。覚えるための呪文でもある「水兵」とは、水素の「すい」とヘリウムの「へ」を取って、「すいへ」イコール水兵という具合だ。化学と言うと、原子と原子が反応して新しい物質を作り出すと思うかもしれないが、ヘリウムは反応しない。反応しないから希ガスとも言われている。しかしその反面、反応しないという特性を生かし、医療、科学、産業などの分野で重宝されている。最近ヘリウムを使用する特徴として脚光を浴びているのは、浮かぶ風船であったり、声を変えるパーティーグッズだったりしている。でも、地に足が着いた主な用途は、MRIや超伝導の冷却剤としての用途だ。半導体の製造にとっても無くてはならない希ガスとなっている。だが、そのヘリウムが危険なまでに残り少なくなっている。ところが、オックスフォード大学らの研究チームが、東アフリカのタンザニアで大規模なヘリウムガス田を発見したとのこと。研究者らはヘリウムガス田をターゲットとして探知、発見すること自体が初めてだと言い「状況を一変させる」発見だと語っている。通常ヘリウムは天然ガスから偶然発見分離されるもの。単独採掘ではコストが見合わない。ところが、需要がひっ迫し価格は鰻上りだ。有用なものにはそれなりの価値がある。そういう事だろう。一方自分はこう思う。ヘリウムは他と混じらわずいつも孤高だ。しかしいつも自分の立ち位置を保っている。これからはヘリウムみたいなそういう人物が時代を引っ張っていく源になっていくのだろうと。