何故笑点司会は昇太なのだ

日曜日夕方のNTV番組「笑点」の大喜利の司会を務めてきた桂歌丸師匠が、体力の限界を理由に今日の番組で降板した。歌丸師匠は、笑点放送開始の初回から50年間も連続で出演し、この10年は司会者として活躍してきた。見るからに虚弱体質で、かつ高齢。これ以上体に鞭を打つのは忍びないと感じていたから、降板したことは良い事だと思う。巷では、さて歌丸師匠に続く司会者は誰になるのだろうかと色々取り沙汰されていた。振り返ってみると、初代は立川談志で、前田武彦、三波伸介、三遊亭円楽、そして歌丸師匠へと続いてきた。当時先代の円楽が歌丸師匠を指名した時、こんな小物にして良いのだろうかと懸念したことを思い出す。歌丸師匠自身もそう思っていたはずだ。だから、大政奉還として今の円楽に席を譲るのは間違いないと思っていた。ところが、歌丸師匠の口からは意外な人物名が飛び出した。誰しも円楽を予想していたに違いない。ところが何と笑点大喜利の最も新参者の春風亭昇太だと言う。実力順でもないし、年功序列でもない。大抜擢だ。これから昇太は、上から目線の強者相手に大喜利を仕切らなければならない。大変だと思う。だが、よくよく考えると、そこには歌丸師匠の先代円楽に対する感謝の念が秘められているように思う。歌丸師匠は降板するに当たって当時の自分の心境を思い出したに違いない。未熟な自分を抜擢してくれたお蔭で今日の自分がある。そこで先代円楽への恩返しとは何だろうかと考えた。その答えが大政奉還ではなく、若手の抜擢だ。若手の抜擢ということは、落語界への新風挿入でもある。多分、歌丸師匠はそこに気付いたのだと思う。歌丸師匠の落語に対する深い思いを感じることが出来た新旧交代劇であったと思う。