アベノミクスに毒されて

日本が受注を目指してきたオーストラリアの次期潜水艦は、フランスが受注することになった。中谷防衛相のコメントは「日本が選ばれなかったことについて大変残念」。何か変だ。防衛相の仕事は日本の防衛であり、決して潜水艦の売込みではない。いま日本の政治は、極めて経済一辺倒に傾き過ぎている。防衛相までもがアベノミクスに毒されているようだ。オーストラリアの首相が去年の秋にアボットからターンブルに替わった。アボット時代は、日本が受注競争の一番手にいると言われていた。アボットは、海洋進出を強行する中国の封じ込めを狙い、日米との連携強化を重視し、潜水艦計画もその一環に位置付けていた。ところが、ターンブルは実業家出身の経済通で、潜水艦計画でも雇用創出や経済効果に重点を置いた。日本は現地生産に消極的だが、フランスは積極的だった。しかも、オーストラリアにとって中国は最大の貿易相手だ。ターンブルは日中間の対立に巻き込まれることを恐れたのだろう。日本が受注出来なかった理由は、オーストラリアの首相交代による変化を読み取れなかったことだ。優秀な防衛相であれば、首相交代による国際関係の変化を敏感に感じ取ることが出来るはずだ。今回は潜水艦の売込みだけだったので良かったが、果たして国際情勢の緊迫時に適切に対応出来るのか、極めて心配な種が一つ増えたようだ。