旅のオマケは「波の伊八」

大多喜へ1泊で旬の筍を食べに行く事は決まったが、次の日の行動が決まらない。この辺りは、もう何度も来ているので、今更目新しい観光名所などは無いと思っていた。でもカミサンが何処に寄るのかと迫ってくる。自分は追い込まれ必死に考えた。その時閃いたのが「波の伊八」。いつしかテレビで見たことがある。北斎に影響を与えた美術界の重要人物だ。千葉県にも歴史的に有名な彫刻師がいた。今回は「伊八」をテーマに廻ることにした。まずは宿から近い行元寺へと出発。行元寺には、波の伊八と偉名を取る「波に宝珠」の欄間がある。北斎はこの欄間を見てかの有名な「神奈川沖浪裏図」を創作し、これがゴッホに伝わり、更にドビュッシーの交響曲ラ・メールの誕生になったと言われている。実物の「波に宝珠」の欄間を見て、その波の表現力に驚いた。浮世絵は、波の表現といい雨の表し方といい抜群に優れたものがある。まさにここに起源があることを肌で感じた。更に次なる寺を目指した。太東崎の飯縄寺。この寺は天狗と牛若丸の彫刻で有名らしい。話は変わるが、太東崎はカミサンとの初デートの場所だ。こんな所に伊八が眠っているとは夢にも思わなかった。この寺は本堂も鐘楼も伊八の彫刻で埋め尽くされている。圧巻は、本堂の「天狗と牛若丸」。カタログや写真で見ると、どうという事は無い。寧ろ見たいと思う願望が生じない。ところが、実物には圧倒された。極めて奥行きが深い。どうしたらこれ程立体的に彫れるのだろうかと自分の目を疑った。説明によると一本の太い木から削り出したとのこと。この「天狗と牛若丸」が伊八の代表作と言われている。実物を見ると、心底その実力がヒシヒシと伝わってきた。まさに波の伊八を堪能した旅行であった。