認知症の裁定

認知症の老人が徘徊中に電車にはねられ死亡した事件について、始めて最高裁の判決が下された。経緯はこうだ。妻は認知症の夫を監視しながら介護していたが、うたた寝をしたスキに夫が徘徊し電車に撥ねられた。長男は事故のあった中部ではなく関東に住んでいた。その事故に対しJR東海が妻と長男の家族に対し振り替え輸送費など約720万円の損害賠償を遺族に求めた。民法には、責任能力のない認知症患者らによる事故などの損害は「監督義務者」が賠償するとの規定がある。一審(地裁)も二審(高裁)も、この規定を適用し、JR東海の請求を認めた。だが、自分はその判決に対し当時こんな理不尽なことがあって良いのだろうかと憤ったものだ。そして今日の最高裁判決を迎えた。判決は、JR東海の賠償請求を棄却し家族は賠償責任を負わないとする判断が確定した。一審も二審も間違っている。現行の法律を文字通り解釈しただけで常識にはそぐわない。最高裁の判決は極めて常識的なものだったと思う。最高裁と言えば、日本の常識としての最高権威のはず。言葉を変えれば、最高裁の判決を見ないまでは、日本の常識が確立しないということとも言える。だが、極めて歪で不自然だ。この事件は、発生当時から老人に罪はないし、ましてや家族に罪はないと思われていた。最近の地方(痴呆)の裁判所裁定はおかしい所が多い。極稀なのかもしれないが、だが今回の最高裁の判決は正しかったように思う。