良い医者と悪い医者

我が家にも波風が立ってきた。と言っても我々夫婦間のことではない。極めて元気だった義母の様子が少し変わってきたのだ。91歳で身の回りのことは全て本人がやる生活を続けてきたが、先日入浴中に目眩がしたということが始まりだった。本人は嘗て軽い脳梗塞を起こしたことがある。そこで、これは脳の異常に違いないと考えたようだ。早速かかりつけの病院で脳のMR検査を受けた。その画像を見て、医者は軽い気持ちで「嘗て軽い出血を起こした痕跡がありますね」と言った。でも義母は、その出血が進行中で明日にでも大出血するかのように受け取った。その時以来、あの元気溌剌な義母の姿は消え、明日にも死にそうな義母に変身してしまった。ずっと付き添っていたカミサンからみれば、義母が医者の言葉を誤解しているのは間違いない。どう見ても健常者なのだから。この医者が、患者を診ずにデータだけを見ているのが元凶だと思ったようだ。だが義母は落ち込み切ってしまった。その後カミサンが義母を連れて何度か病院に通い、医者から問題の無いことを説明してもらい納得させた。その都度義母は納得するが、次の日になると不安が蘇える状態が続いた。双六で言うと、振出しに戻ってしまうのだ。病院通い何回目かに医師が変わり、その説明に義母がやっと納得した。今は義母は昔通りに元気溌剌だ。だが、カミサンにはダメージが残った。義母が躁鬱を繰り返すたびに、鬱と真面に対処していた。その心労が心臓の鼓動に影響を与えたようだ。患者にとって、医者には良い医者と悪い医者がいる。悪い医者には早めにサヨナラすることが、賢い患者の知恵なのかもしれない。