危機管理能力のない経営者たち

旭化成OBとして、横浜傾きマンション事件の顛末は聞くに忍びない。自分は旭化成で仕事をしてきたことに誇りを感じている。だが、今までの自分の半生で旭化成に対しこれ程落胆し、怒りを覚えたことはない。横浜傾きマンション事件では、不正な杭打ち工事をしてマンションを傾かせ、住民と請負元に多大な迷惑をかけている。更に親会社の旭化成社長は事件発覚後7日も経ってから謝罪会見を開き、「誠心誠意」と「調査中」と言うだけで不安を一層増長させた。要するに、あってはならないデータ改ざんで不正を誤魔化した杜撰な工事をしながら、挙げ句の果てに親会社の社長が遅れに遅れて登場し、言葉と涙だけで誤魔化そうとしている。真相はまだはっきりしないがそう受けても仕方がない事件だ。だが、自分が知っている旭化成は決してそんな会社ではなかった。もっと熱いし、真面目で人を裏切ることはない。今は全てが後手後手に回っている。マンション住民の苦悩は計り知れないものが有る。如何にフォロー出来るかが三井、三井住友、日立、旭化成に求められているが、未だに費用の綱引きを繰り広げている。結果として住民が蔑ろにされている。この事件について旭化成サイドから見た景色を話してみたいと思う。事件の発端は間違いなく旭化成にある。担当者一人しか現実を知らないというのはシステム的な基本的な欠陥だ。誰でも間違いを犯すという原則に対処していない。改革が必要だ。でも、これは欠点であるが致命傷ではない。治す方法はいくらでもある。致命傷は社長の危機管理能力の欠如にあると思う。事件発覚後7日も経ってから会見するには、核心を突いた答えが必要だ。7日も経って核心の「か」の字もない。「拙速」の大事さが分かっていない。他の経営トップも同罪だ。「火に油を注ぐ」とは、こういことを指すのだろう。昔の雪印の社長の「私も寝てないんですよ」という言葉が蘇える。本質的には全く同じだ。そもそも何故浅野なる人物が社長になってしまったのだろうかを考える必要がある。浅野は医薬の研究一筋で、実務能力は未知数で、ひょとするとゼロかもしれない。ところが当時の伊藤会長が、当時の旭化成に経営リスクは無いと判断して、実務能力が無くても「研究開発と経営は基本的には同じ」などとほざく浅野を社長の座に就けたのだ。要するに、実務能力もなく、危機管理能力もない人物を社長に据えてしまったのだ。伊藤会長の慢心の為せる業か驕りかもしれない。浅野社長への買い被りとも言えるだろう。結局この事件で、旭化成のブランドイメージは地に落ちた。勿論株価も知名度も半減。だがダーティさは倍増した。旭化成が今後生き延びるには、このダーティさを中和するために旭化成が全ての費用を賄って、反省の意を表すことしか無いと思う。浅野に決断が出来るだろうか。危機管理能力のない人間に出来るはずがない。旭化成は何処かで道を外してしまったようだ。元に戻る道があるのかが心配だ。