医学部の定員削減は必要か

政府は2020年度から医学部の定員を削減する検討に入ると発表した。人口減少と病院ベッド数の削減を見据えて、医師の数を抑え医療費の膨張を防ぐ狙いとのこと。7~8年前に救急患者のたらい回しが社会問題になり、医学部定員の増員を図ってきた。その結果、当時に較べ医師数は1割増え30万人になった。しかし、現実には都会の小児科、産婦人科、外科を扱う開業医は減り、美容整形外科ばかりが目立って増えてきている。しかも地方ではどの診療科も慢性的に医師不足をきたしている。医師数が増えたとはいえ、一般市民に必要な診療科の医師は減っているのが実情だ。現状に対応するには、今後も医師数を増やすことが必要だ。従って、政府の削減案は間違いだと言える。だが、現状の医師数でも、やりようによっては医師不足を解消し、かつ医療費を抑える方法もあるはずだ。現在の問題点は、診療科の医師数バランスと都会/地方の医師数格差。日本も訴訟社会になり、クレームが発生し易い小児科、産婦人科、外科の医師は成り手が少ない。増やすにはクレームを医師だけに任せない対策を国が率先して構築する必要がある。保険のきかない美容整形外科は小金が入るため成り手は多い。この種の医療料金に歯止めをかけ濡れ手にアワ状態を解消すべきだ。現在国は医師の卵を、奨学金の返済免除というニンジンで地方に引き留めようとしている。それも一つの方法だが、都会も含め地方の医師や診療科に定員制やローテーションを導入し、地方勤務の医師数の定着を図るべきだ。更には、医師の仕事内容を見直し、米国のように医師と看護師の分担責任範囲を改正すべきだ。それにより医師の生産性は高まり、ひいては医療費の抑制に繋がることになる。厚労省が机の上で鉛筆をナメナメして医療費を抑制しても、シワ寄せが国民に来るだけだと思う。