核兵器のない世界

広島平和記念式典での安倍首相の挨拶の内容が、昨年とは様変わりだ。昨年は一昨年と殆んど同じ内容だったので、コピペで済ませるなと極めて不評だった。式典に臨む首相の心構えの程度が知れた。今年はスピーチライターが変わったようだ。内容は変わった。今年の秋の国連総会で新たな核兵器廃絶決議案を提出することと、来年の外相G7会合が広島で開催されることを発表し「核兵器のない世界」の実現に取り組むことを表明した。だが一方で歴代首相が毎年言及してきた「非核三原則」については省略した。早速非難の声が上がったが、すかさず菅官房長官が「非核三原則は全く揺るぎはない」とフォローした。首相は何故故意に「非核三原則」を外したのだろうかと考えた。「非核三原則」とは、1967年に佐藤栄作首相が、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」と明言したもの。これで佐藤首相はノーベル平和賞を受賞し、政府は国是として堅持してきた。国是とは、一国の政治上の大方針のことをいう。しかし、沖縄に米国の核兵器が置かれているのと、日本に寄港する空母に搭載されているのは公然の秘密と言われている。既に「持ち込ませず」は破られている。首相は安保法案の成立も近いので、この際非核三原則も済し崩しにかかろうとしたのかもしれない。あるいは国是とはお経のようなものなので、省いても何ら問題はないとでも考えていたのかもしれない。「核兵器のない世界」という首相の挨拶が広島へのリップサービスに聞こえてならない。