ワンマン経営の行く末

スズキの鈴木修会長兼社長が、社長職を長男に譲ると発表した。御年85歳の鈴木会長は5月の決算会見では、90歳までトップを続投すると表明していた。ところが6月27日の株主総会から僅か4日後に突然の社長交代だ。重要人事は株主総会にかけるのが常識。自分はスズキの株主ではないから文句を言う立場ではないが、株主たちは今年の株主総会は一体何だったのだろうかと思っているに違いない。鈴木会長は優秀な経営者でスズキの中興の祖と敬われている。経営実績は申し分ないが、ワンマン経営者としても名を馳せている。不確定要素の多い時代にはワンマン経営は機能し効率が良い。しかし一方で裸の王様状態にも陥り易い。裸の王様の下では優秀な部下が育たないのも常識だ。突然の社長交代もそれを裏付けているように映る。自分も嘗て子会社に移った時ワンマン経営者の下で働いたことがある。確かにその経営者は優秀で、問題意識も明確で行動力もあり、相手の意見をねじ伏せる豪傑だった。問題は部下たちだ。取締役を筆頭に部課長クラスが全員ワンマン社長の意向ばかりに目を向けている。と言うよりはビクビクしている。ドイツで重大な品質問題が起きた時すぐに品質責任者が現地に駆け付けるべきなのに、品質担当常務は品質保証部長に対し、社長が行けと言うかもしれないから待機しておけと指示していた。常務ですら自ら決断が出来ない体たらくなのだ。フセインがきっちり治めていた頃のイラクと子会社がダブって見えた。この会社もワンマン社長が去れば今のイラクと同じようになるのかもしれないと思った。自分が早期退職したのは、この会社風土に嫌気がさしたことも一つの要因だった。