質屋の今と昔

今日の朝刊の全面広告を見て、時代は移りゆくものだとしみじみ感じた。京都らしき風景をバックに「大量消費の国。価値を伝え継ぐ国。豊かなのはどちらでしょう」とのキャッチコピー。物の価値を大切にして次代に引き継ぎましょうというメッセージだ。どこの企業だろうかと興味を持った。広告の主は、何と質屋の大黒屋だ。昔々自分が小学生になる頃、品川区の大井に住んでいた頃を思い出す。隣は質屋で、近所には競馬場があった。ある日見知らぬオジサンが我が家に来て、時計を預けるのでお金を貸してくれと言ってきた。質屋は隣ですよと母が言うと、オジサンは来てみたら質屋が休みだったのでと頭を下げた。競馬ですってしまって帰りの切符が買えないのだと言う。母が「うちは質屋じゃないからだめです」と断ると、オジサンは「重々承知しています。後日必ずお金を返しに来ますから」と懇願し、母は時計をカタに取らずに渋々切符代を貸してあげたことがある。しかし、その後オジサンが我が家に来ることはなかった。その後別のオジサンが同じ理由で来たことがあるが、母はきっぱりと断っていた。質屋とは一時的な繋ぎ資金を必要とする人が通うもので、預けた物が質流れしないようまたまた金の工面をしなければならない。半世紀前の質屋といえば、こんなイメージだった。ところが最近は物が有り余る時代だ。ブランド品や貰い物は不要となれば質屋で換金するのが当たり前になっている。勿論質流れを前提としている。大黒屋の広告の通り、現在の質屋は高級リサイクルショップ業ということなのだろう。