アンモニア合成の意義

東工大がアンモニアをセ氏350度、常圧で合成する技術を開発したとのこと。触媒を工夫して従来の10分の1未満のエネルギーで出来る可能性が出てきた。アンモニア合成は約100年前に工業化されたハーバー・ボッシュ法が有名で、その後改良されてはいるが500度、200気圧の条件が必要だった。常圧で合成出来ることはかなり革命的な研究成果だと思う。歴史的に見ると、アンモニア合成が開発されたので空気中の窒素の固定化が出来るようになった。それにより窒素肥料の大量供給が可能になり作物が豊富に作られ人口が爆発的に増えることが可能になった。一方ダイナマイトの原料である硝酸の大量生産も可能になり戦争で使われたこともある。使い方は人間の問題ではあるが、アンモニアが人類の進歩に果たした貢献が極めて大きい事は間違いない。自分は、アンモニア合成を化学式 N2+3H2→/←2NH3+24Kcal で化学平衡の基本として学んだ。発熱反応であるから温度を下げると平衡を保つため発熱するNH3を生成する方向に進む。モル数は左4で右2だから圧を上げると圧を下げるNH3を生成する方向に進む。学生時代が思い出されて懐かしい。今回のブレークスルーは窒素分子の結合を、弱いエネルギーで切断する触媒を探し当てたことのようだ。人類にとって、窒素の固定と二酸化炭素の固定は永遠の課題だ。ITばかりが持て囃される時代ではあるが、最終的には化学こそが原理的に人類を救う科学であると確信している。