タブロイド判の国

今や日本の報道メディアはタブロイド判に成り下がってしまったようだ。勿論タブロイド判とはゴシップ記事満載の大衆紙のことだ。主要テレビ各局も大新聞各社も日本中の主なメディアが、まるで鬼の首を取ったかのように山口県の投票所で職員が寝坊したため投票が5分遅れたと報道している。またある田舎の村では、小選挙区と比例区の用紙を間違って交付するミスがあったと選管の失敗を鼻高々に報道している。しかし、寝坊による投票5分遅延は、果たして全国版的なニュースなのだろうか。数人への投票用紙配布ミスが国家を揺るがす大事件なのだろうか。「重箱の隅を楊枝でほじくる」という諺はあるが、まさにその典型に違いない。その的外れな報道に反発し、主要報道各社が担うべき選挙に関する報道とは何だろうかと考えてしまった。良識のあるメディアであれば、今回選挙の意義と現状に関する考察、投票率の低さに対する分析と批判、そして何故こうなるのかの独自な解説と提案に思い至るはずだ。たとえ偏見でも良い。多少間違っていてもいい。一つの立場を示す考え方を示すことこそ主要メディアの使命に違いない。更に理想を言えば、各主要メディアが多様な意見を発信することこそが、国民により良い解決策を選択させる場を提供することになるはずだと思う。日本のメディアは単色過ぎる。統制されているとも言えるし、極言すれば死んでいるとも言える。タブロイド判しか読めない国の人はきっと不幸に違いないと思ってしまうのだ。