リスクと効果のバランス

温暖化に伴いヒトスジシマカの生息可能域が北上し、日本でもデング熱感染が拡がっている。蚊の増殖速度が速く、それに適した殺虫技術がないことも問題になっている。ところが、実際には存在している。あの有名なDDTだ。戦後の衛生環境の悪い時代に、あらゆる所で大量に使われたあの白い粉だ。DDTの殺虫能力は抜群。スリランカでは嘗て年間250万人を超えていたマラリア患者をDDT散布により31人まで激減させることに成功したが、その後DDTが使用禁止になり再び250万人に戻ってしまったという事実がある。それほどまでに効果は絶大だったが、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」でDDTは鳥に害があるということで世界的に使用禁止になってしまった。リスク学の権威である中西女史は「原発事故と放射線のリスク学:中西準子:日本評論社」の中で、DDTの有用性を述べている。DDTには若干のリスクはあるが、効果は絶大。小さなリスクがあるからと言って、リスクのないものの出現を待っているだけでは事態は好転しない。リスクと効果を天秤に掛けて使用の可否を判断すべきと説く。更に温暖化が進めば、そのうち日本でもマラリアが蔓延することになる。デング熱を勉強台にして、今からリスクを検討することが防疫の一つになりそうだ。