無かったものを作る技術

長年化学の仕事に従事してきたので「結晶」といえば斜方晶とか六方晶とか正方晶という用語と、六角柱とか立方体の形状を思い浮かべる。今までに球形の結晶があるなど聞いたこともない。ところが、芦田大阪大学教授らが世界で初めて球形の結晶を作ることに成功したとのこと。酸化亜鉛の結晶は通常直方体や六角柱などの形をとる。だが酸化亜鉛を超流動ヘリウムの中に入れレーザーで溶かすと、液体になった酸化亜鉛は球状になり周囲がヘリウムが覆うため球形のまま固体化するようだ。セレン化亜鉛でも成功しており真球単結晶を作る一般的な手法になり得るという。球形の結晶が出来ればその用途は無限に広がりそうだ。全く新しい応用分野が拓けるに違いない。まさに科学・産業の基盤技術となり得る可能性は大なのだから、国の更なる支援体制を望みたいものだ。