弘法にも道の誤り

文化庁が後援する書道中心の公募展「全日展」で、県知事賞を受賞した人のうち16県は全て架空人物で、かつ同一犯だったとのこと。しかもその犯人は何と全日展の会長だったのには驚いた。既に会長を辞職し元会長となっているが、元会長曰く「県知事賞は応募がないと次年度から賞が無くなってしまう。全日展の発展、書道の振興のためねつ造した」と。このニュースを聞いて「鶏が先か卵が先か」という言葉を思い出した。世の中の揉め事は複雑な歴史が入り乱れていて、なかなかこちらが先とは言えないのが普通だ。ところが、このねつ造事件は明らかに、卵が先で鶏は後でなければならないと言えそうだ。最近書道を習う人が減っている。まずすそ野を広げるために書道の楽しさ、面白さ、創造の醍醐味さを知ってもらうための企画を立てる。これが卵だろう。そして人が増えるよう多くのニンジンをぶら下げる。これが鶏だろう。元会長は努力する順序を間違えたようだ。それにしても16県の県知事賞を受賞するとは立派なものだ。間違いなく才能のある書道家なのだろう。弘法にも筆の誤り、ではなく弘法にも道の誤り、とでも言えそうだ。