遅きに失した国民栄誉賞

先月亡くなった元横綱大鵬に国民栄誉賞が授与されることが正式に決まった。遅きに失した。本人が生きているうちに授与すべきだったと思う。国民栄誉賞は「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えること」と規定されている。1960年代の10年間が全盛期で数々の優勝を攫った。堺屋太一が言い出した「巨人、大鵬、卵焼」は一世を風靡した。子供なら日本中の誰もが好きだったものだ。自分の母も大の大鵬ファンでテレビに噛り付いて観ていたことを思い出す。国民栄誉賞のスポーツ関係の受賞者は、王貞治、山下泰裕、衣笠祥雄、千代の富士、高橋尚子、なでしこ、吉田沙保里。これらの受賞者の中で大鵬を超えるほどの国民的英雄はいない。王が大鵬に並ぶ程度かも知れない。大鵬は慈善活動にも熱心で、生涯日本赤十字社に血液運搬車を70台も贈ったことでも有名だ。また相撲が強かっただけではなく、人格者ゆえ格式の高い「世界人道者賞」も受賞している。大鵬の偉大さを見抜けず、八百長相撲で名を馳せた千代の富士への授与を優先した当時の海部総理は、目が節穴だったに違いない。晩年を苦労した大鵬が生きているうちに授与されていれば、本人の喜びは如何ほどであったのだろうかと思えてならない。