崖のある国、ない国

昨年末は米国の財政の崖が問題になっていたが、ギリギリで目先の妥協案がまとまり一応2か月だけは先送りされた。ブッシュの富裕層減税の期限切れによる実質増税と強制歳出削減が偶々2013年1月1日同時に施行されることになり、施行されれば米国経済が急速に減速し大恐慌に陥る恐れがあった。それをFRBのバーナンキが財政の崖と名付けた。強制歳出削減とは、2011年に民主党と共和党が合意して出来た法律で、削減は必要だが削減案について合意が出来なければ強制的に歳出を削減するというもの。その後両党の削減案は折り合わずスッタモンダの挙げ句今日に至っている。民主党も共和党も国民不在で政治が機能していない。まるで日本の政治と同じように映る。しかし一方日本はアベノミクスで順風満帆のように見えるが本当にそうだろうか。日本には財政を律する法律がない。従って、国債発行は時の首相の気分次第で決まる。国家予算も歯止めがない。一旦政権を握れば予算編成はやりたい放題の無法地帯と化す。直接国民が選んでもいない首相が、国民の意に反して勝手気ままにやることに怒りを覚えるのは自分だけだろうか。見方を変えれば、日本には崖がないから政治家のやり放題となるとも言える。しかし実際に日本に崖がないのではない。米国よりも大きく深い崖がある。ただ法律という眼鏡がないから見えないだけの話だ。財政健全化法を制定し国民に誰でも見れる眼鏡を提供することこそ政治家の使命と言える。