天空のロマン宇宙竜巻

SFの世界の宇宙戦艦ヤマトには、白鳥座星域の赤色イオン流である宇宙竜巻が登場する。電波望遠鏡で観測すると竜巻のように見える謎のらせん状天体だ。現実の世界では1960年に宇宙竜巻が発見されて以来、発生源は超新星爆発の残骸とする説や回転する中性子星との見方もあった。しかし京都大と慶応大の研究チームがX線天文衛星「すざく」などでの観測の結果、発生源はブラックホールであることが分かった。強い重力があるブラックホールには周囲の物質が円盤状に渦を巻いて流れ込む。一方、円盤の上下方向には「ジェット」と呼ばれる高エネルギー粒子の噴流ができる。ブラックホールの位置が近くにある別の大天体の影響で揺れ動くと、ジェットがらせん状になり、竜巻のように見えると考えられるらしい。今後宇宙航空研究開発機構が2013年度に打ち上げるX線天文衛星を利用し、宇宙竜巻のブラックホールの直接検出を目指すという。宇宙竜巻が発見され、それがSFとなり、X線天文衛星によりブラックホールの仕業に違いないと推測され、再来年はそのブラックホールの直接検出を目指すという、まさに天空のロマンそのものだ。