博士号の価値

日本のポスドクの就職率は相変らず低迷したままだ。日本の大学院博士課程を出ても就職先が見つからない。たとえ優秀でも仕方なく大学院に残り、院生の手伝い程度の仕事をしながら研究を続け、薄給の不安定な生活を送ることになる。欧米では、ポスドクはトレーニング期間として浸透していて、任期を終えた後は正規の研究員として、それぞれの研究を進めていくのが一般的だ。ところが日本ではそうならない。企業がポスドク採用を避けるのだ。入社した新卒を入社後に再教育して企業風土に馴染ませる慣習があることと、元々研究内容に重きを置いていないからだ。ところが、熊本に半導体工場を作ったTSMCが、ポスドク獲得のため全国行脚を始めたという。TSMCは役員28人のうち17人が博士号を持っている。TSMC幹部は「日本人は想定より働かないが、博士号を取得できる学生なら違うはずだ。昼夜を問わず研究開発に没頭できる人材を探している」と述べている。TSMCの動きで、日本の経営者がやっとポスドクの価値に気付くかもしれない。もし気付けばウインウインの関係が築かれるのだが。