IOCの存在価値と越権行為

バッハIOC会長が「決してロシアを復帰させるという意味ではないが、ロシアのパスポートを持つアスリートで、戦争を支持しない者についての競技復帰を考えていきたい」と救済案を提示した。これに対し、ロシアのアスリートたちは猛反発しているという。2006年トリノ五輪・フィギュアスケートのペアで金メダルを獲得したタチアナ・ナフカは「スポーツと政治は切り離すべきだと言いながら、結局はアスリートたちを政治に引きずり込んでいる。明らかな脅迫行為だ」と言う。フィギュアスケート・ペアで3度の金メダルに輝いたイリーナ・ロドニナも、2006年トリノ五輪・女子スピードスケート500mで優勝を飾ったスベトラーナ・ジュロワも、現役のオリンピアンである男子体操団体の金メダリストであるアルトゥール・ダラロヤンも、バッハの主張を非難している。そもそも、五輪とはスポーツと政治を切り離し開かれる祭典だった。戦争当事国には、それぞれそれなりの主張があり、一概に片方が悪いとは言えないものだ。本来は、戦争当事国も参加して開き、スポーツを通して相互理解をする場でもあるはずだ。寧ろ、そこに五輪の存在価値がある。バッハは、ウクライナが善で、ロシアが悪と決めつけている。これこそ、IOCの越権行為だと思う。