喫緊の問題を自ら解決する力が

岸田首相が、今夏以上に電力の需給が逼迫するとみられる冬場に向け、原発の稼働を9基に拡大する方針を表明した。更に、並行して火力発電の再稼働も加速させることで「政府の責任においてあらゆる方策を講じ、将来にわたって電力の安定供給が確保できるよう全力で取り組みます」と政権のリーダーシップをアピールしてみせたとのニュース。決断だと評価する声もあるが、何か変だ。現在、国内にある原発は33基。このうち原子力規制委員会の安全審査を通過し、稼働可能な状況になっているものは10基。原子炉等規制では13か月に1回、定期検査を義務づけているから、10基の同時可能な時期はない。冬場の稼働数が最大となるのは2023年1月下旬から2月上旬の1ヶ月間だけ9基の稼働が可能になる。岸田発言の問題点は2つある。1つは、寒波が襲来した場合として、経産省の見積もりには既に原発9基の稼働が織り込まれていることだ。電力会社も既に織り込み済み。何を今更という訳だ。国民は騙されているが、電力会社は白けている。リーダーシップ力ゼロ。もう1つは、冬場の電力不足を乗り切る方策が無いこと。火力発電は、廃棄の事後承認制を事前承認制に変えたが、時既に遅し。廃棄した火力は戻らない。問題点は2つと言ったが、正確には1つ。岸田には、喫緊の問題を自ら解決する力が無いことに尽きる。コロナ第7波対策も同じ。