チャーチルになれなかったジョンソン

ついにジョンソン英首相が辞意を表明した。ジョンソンは学生時代から、確立されたルールや慣習に捕らわれないのが信条だった。首相の3年間で、ブレグジットを主導し、香港市民へ特別ビザを発給し、ウクライナ軍事支援もいち早く打ち出した。非凡な人物が意志と人格で歴史を変えるという英雄史観を持っていた。非凡であることは間違いない。尊敬している人物はチャーチル。チャーチルは、確固たる歴史観を持って細部にも注意を払い、慣習を尊重した。でも、ジョンソンは、歴史には精通していたが自己中心的で経験と勘に頼った。だから、チャーチルにはなれなかった。政権運営は綱渡りだった。政策よりスローガンを好んだ。この点だけは岸田首相と似ている。結局、ロックダウン規制を自ら破りパーティーに参加したことや、不適切な任命で、順法精神と誠実さの欠如が問われ、辞任に追い込まれた。ジョンソンは言わば欠点だらけの人物ではあるが、リーダーシップ力だけは優れていた。英国は順当な判断をしたと思う。