大昔のサーカス団そのもの

何とも後味の悪い競技だった。北京冬季五輪の女子フィギュアスケートのことだ。IOCは、ドーピング違反のワリエワ選手の出場を認め、本人が3位までに入賞した場合表彰式を行なわないとした。ワリエワ選手に注目が集まり興行としては成功したようだが、選手たちは相当傷ついたように見える。結局ワリエワ選手は4位に落ちた。15歳のワリエワ選手にとって、スケーティングするどころの心境では無かっただろうことは容易に推測される。IOCの措置はワリエワ選手にとって酷な仕打ちだったと思う。トゥトベリーゼコーチは演技終了後のワリエワ選手を叱咤した。まるで傷口に塩を塗る行為だ。2位のトゥルソワはトゥトベリーゼとのハグを拒否した。ロシアスケート界、特にトゥトベリーゼは少女の使い捨てと異名をとっている。ロシア女性は18歳を過ぎれば膨よかになってしまい飛べなくなってしまう。裏返せば、15歳までが賞味期限とコーチは考えている訳だ。それまで徹底的に過酷に鍛えるのが、コーチが名声を得るためのコツになる。まるで、大昔のサーカス団そのもの。そこには人権も師弟愛も全く無い世界だ。3位の坂本選手と5位の樋口選手がハグして喜び合う姿が一服の清涼剤となったのは対照的だった。