コロナ対策へのビジョンの有無

東京五輪が開催する方向で決まり、今は有観客か無観客かのせめぎ合いだ。海外では有観客が多いのに、五輪は事実上ほぼ無観客に決定した。海外と日本の違いを、感染症が専門で新型コロナウイルスに関する発信を続けている岩田健太郎神戸大教授が解説しているのが興味深い。サッカーUEFA EURO2020のイングランドでは、抗原検査を観客の入場条件としていて、9万人収容のスタジアムに6万5千人を収容して開催された。ワクチン接種率も高いが、毎日新たに3万人近い感染者が見つかり、毎日300人ほどが入院している。コロナによる死者はガンや心臓発作に比べれば死者の割合はそれほど大きくないから、イギリスでは「コロナと共に生きてゆく」と態度を決めたからだと言う。F1のオーストリアGPでは、3日間でのべ約13万人の観客が訪れたとのこと。その理由を岩田教授は「ヨーロッパでは、コロナ対策をしっかりやった後、経済やイベントのご褒美がついてくる」と言う。一方日本は感染者が増えているのにGoToをやって真逆のミスをしていると指摘している。カリフォルニアでは、まだコロナが下火になっていないが、経済活動を全面再開しマスク不要の緩和も行なっているが、それはワクチン接種を促すための方便だと言う。一方日本では、感染者が増えたから緊急事態宣言をと、なんのビジョンもなく、場当たり的な対応をしているだけと指摘している。岩田教授は「日本には対策のビジョンがない。これは科学的にも、理性的にも本当によくない」と締めくくっている。横浜港のダイヤモンドプリンセスでのコロナ感染の時から、もし岩田教授が陣頭指揮を執っていれば、今頃日本は大手を振って五輪開催に邁進していたに違いないと思わざるを得ない。