普通はない

尾身会長が衆院厚生労働委員会で「今の状況で五輪を開催するというのは普通はない」と指摘したことが大きな話題になっている。尾身会長の言を要約すると「政府は何のために開催するのか明確なストーリーとリスクの最小化をパッケージで示せ。五輪のバブル内の感染対策だけでなくバブル外を含めた感染対策を議論すべき。感染リスクについて近々、関係者に考えを示す」と、一歩踏み込んだ。それに対し、田村厚労相は「自主的な研究成果の発表だ」とスルーした。丸川五輪相は「全く別の地平から見てきた言葉を言っても、なかなか通じにくい」と意味不明の発言だ。政府高官や自民党幹部は「言葉が過ぎる」「尾身は五輪の開催を判断する立場にはない」と批判している。でも、そもそも、尾見氏が会長を務める政府分科会の役割は、国民の生命を守るべく、新型コロナウイルスの感染拡大を抑止するために政府が対策を打ち出すにあたって、ド素人の首相から役人たちに専門的な知見と助言を与え、政策の諮問があればこれに答えることにある。しかし、分科会で専門家がいくら助言しても、政府は有効な感染対策を打ち出さないから、業を煮やした尾身会長が政府のやるべきことを具体的に示してあげたに過ぎない。要するに、問題は政府の不作為なのだ。今の状況で有効な感染対策を打ち出さないというのは普通はない。