社会病理学の権威

文春オンラインに載っている感染症医・岩田健太郎医師のコメントが目に留まった。「安全と安心の違い」と「客観的データとは」について述べている。要約すると以下のようになる。政治家が「安全・安心のため」というフレーズをよく使うが、安全と安心は別物だ。安全というのは危険を取り去ること、あるいは危険を低減させること。「外科手術をすればこの病気は治る」といった具合に、データと科学的根拠に基づいているのが安全だ。一方安心とは、幻のようなもので実在はしない。それは「安心したい」という願望にすぎない。新型コロナ対策において、大切なのは安全だけだ。安心は無用であるだけでなく、時には有害ですらある。たとえばマスクをつけたことで安心して、人との距離について無頓着になってしまったら、その安心は有害になる。危機的状況があるときは、むしろ不安を持つべきだ。マスコミは感染者数を連日報道している。ところが、新規感染者数と解説がセットになっていないので、その数値が客観的データになっていない。マスコミはいろいろあるデータを多角的に見て解説をするのが本来の仕事だ。解説が無いばかりか、情緒的なことを付け加えるから、事実関係が客観的に益々伝わらなくなっている。情緒ではなく事実に向き合うことが大切だ、と締めくくっている。岩田医師は感染症が専門だというが、社会病理学の権威とも言えそうだ。