黙祷:李登輝

台湾民主化の父・李登輝が亡くなった。22歳までは岩里政男と名乗る日本人で京大出身の親日家。どこか明治気質を彷彿とさせ、自分の父を連想させた。だから、李登輝の訃報を聞き父を思い出した。李登輝は言う。物事は白黒では決着しないと。文化とは伝統と進歩という一見相反する概念の二者択一ではなく、それをスパイラルに繰り返しながら成長していくものだと。いま李登輝が現役で世界を主導していれば、トランプも習近平も霞んでいるに違いない。当時李登輝は、それまで中国本土から渡ってきた外省人が要職に就いていたが、台湾出身者で初の総統に就き台湾の主体性を重視する台湾人意識の醸成に力を注ぎ、台湾住民による総統直接選挙を実現させた人物だ。1898年までは台湾の教育は四書五経だけだったが、日本が統治したことにより台湾でも博物学、数学、歴史、地理、社会、物理、体育、音楽などを学べることが出来るようになったと李登輝は振り返っている。更に「指導者は理想や考えを示すだけではだめで、実践して初めて意味を成す」と、有言実行の重要性にも触れている。さて、理想も考えも示すことの出来ない日本の指導者は、李登輝の死を如何に思うのであろうか。