夏の夜の思い出

西の空には宵の明星、南東の空には最大接近の火星、そして両者の天秤の支点となる位置にあるアークトゥルス。夏の夜空は以外と寂しい。明るい星の数が少ない。夜の7時半から8時半のこと。アークトゥルスはマイナス1等星だから、まるで夜空を支配しているように見える。そのアークトゥルスが支点になり、宵の明星は西の空に傾き、話題の巨大火星が東の空から登ってきた。この夏の夜空を背景に我が街の花火が打ち上がった。四畳ほどの我が家のベランダにテーブルと椅子を持ち出し、夜空のスペクタクルを鑑賞する前に細やかなディナー。夜風というよりは夕風が快い。そして花火大会の開始を待った。多少蚊に食われたものの花火大会が始まった。ほぼ1時間。真下で観るほど迫力は無いが、花火を観るには特等席。何と言ってもアルコールも付いているし、ホステスではないがカミサンと義母も侍っている。最後の豪華な花火と共に花火大会は終了したが、その時、宵の明星も西の空から姿を消していた。まるで、宵の明星が花火大会を引き連れ、去って行ったような気持ちがした。年老いてからの、夏の夜のひと時の思い出となった。