参院6増強行の反動

参院6増法案が、国会終盤に突如提案され、降って湧いたようにあっと言う間に成立した。表向きは「1票の格差是正」だが、内実は「合区落選者の救済」だ。大きな問題が2つある。1つは、定数増により格差を縮めること。人口減の時代に、議員の定数を増やすなど時代の流れに逆行している。格差是正は、定数を減らしながら図るのが常識だ。採決で法案に反対し棄権した船田は立派だが、賛成票を投じた進次郎には呆れてしまう。問題のもう1つは、比例代表に特定枠を設けたこと。特定枠とは、あらかじめ政党が決めた順位に従って当選者が決まる枠のこと。使用の有無も使い方も各党の自由になっている。自民が、合区された鳥取と島根、徳島と高知の4県のうち、選挙区に候補者を擁立できない県からも、確実に議員が生まれるよう編み出した合区破り戦法だ。例えば、鳥取と徳島の選挙区に候補者を立てれば、島根と高知は比例代表の特別枠で当選させようという魂胆。これでは、県民の意思とは関係なく政党の意向で当選者が決まる。言い換えれば、選挙権という国民の主権を奪うものとも言える。これ程酷い悪法ではあるが、良い点もある。全く機能しない参院のあるべき姿を再考させてくれる。参院不要論が高まり、一院制が現実のものに近づくかもしれない。