日本扶桑国之図

日本列島のほぼ全域を描いた最古級の地図が発見されたという。14世紀中ごろの室町時代に描かれたらしい。日本扶桑国之図という。現存する最古の日本地図は仁和寺所蔵の1305年の「日本図」とされているが、残念ながら西日本が欠けている。日本扶桑国之図には、北海道は入っていないものの沖縄までも記載されている。地図そのものは、伊能忠敬のように精密ではないが、国内68カ国が描かれ、地図の欄外には国名と郡名、人口や田畑の面積、寺の数なども記されている。しかも、京都から各地への幹線道路が記載されている。まさに都人の為の鳥瞰図と言えそうだ。そこで地図の在り方を考えてみた。真っ先に思い出したのが「話を聞かない男、地図の読めない女: 藤井留美訳:主婦の友」だ。日本扶桑国之図は男脳で書かれている。鳥瞰図的な発想がある。鳥瞰図的だから、細部には拘らない。でも、配置関係は大事にする。その典型例だと思う。そこで思った。自分は鳥瞰図派なのだろうか、それとも伊能忠敬派なのだろうかと。間違いなく、自分は鳥瞰図派だと思う。自分の目を中心に周りを見るのではなく、自分の頭の上空高くから、辺りを見回すことこそ、常々大事だと思っている。でも「地図という存在」があったからこそ、鳥瞰図的な発想が可能になったのだと思う。地図の無い時代に日本扶桑国之図を描いた人は、当時稀なる鳥の眼を持っていたようだ。身震いを覚えるほど感心した。