無いはずが在った反物質

京都大の研究チームが、雷が大量の反物質を生成することを世界で初めて発見し、その仕組みも突き止めたとのこと。反物質は、物質と電気的な性質が逆で、それ以外の質量などの性質は同じ。今から138億年前の宇宙誕生時には反物質は物質と同じ量があった。物質と反物質が出合うと光を放出し、いずれも消滅してしまう。ところが、現在の宇宙は反物質だけが消滅し、物質だけが存在している。だから、反物質はなぜ消えたのかという謎は、素粒子物理学の最も重要なテーマの一つになっている。その反物質が、身近な気象現象である雷によって大量に生成されているというから驚きだ。仕組みはこうだ。まず雷からガンマ線が出て大気中の窒素と反応する。すると放射性同位体が出来、反物質である陽電子を放出する。そして陽電子は電子と衝突し消滅する。雷雲の中では、1回の放電で数兆個の陽電子が作られ、10分間ほどの間に発生と消滅を繰り返すと推定されるという。宇宙から反物質が消滅した謎は、日米で素粒子ニュートリノを使って確かめる実験が続いている。そのうち、その謎も解明されるだろう。日本の宇宙研究畏るべし。