成果のない閉会中審査

国会予算委員会の閉会中審査が終わった。案の定水掛け論に終始し、何の解明も得られなかった。加計学園問題は「記録」対「記憶」の戦いだった。一般庶民には「記録」が事実で「記憶」は信用出来ないのが常識。だが、政治の世界は「記憶に無い」が通用する程歪んでいるとみえる。野党は、安倍が加計の獣医学部申請をいつ知ったかに焦点を当てていたが、これが追求失敗の元。安倍が申請をいつ知ろうが問題の本質とは関係ない。加計が安倍のポン友であることも関係ない。安倍が加計学園を国家戦略特区の俎上に乗せるよう指示したとしても問題ない。要は、獣医学部新設が岩盤規制を打ち破るに値する案件かということだ。国家戦略特区とは、岩盤規制が及ばぬ特区を作り、新しい案件を試行して成果を評価し、著しい成果があれば規制を撤廃し全国に展開するためのもの。獣医学部新設が国家戦略特区の案件たり得るのかを審査すべきだった。国内畜産業は政府の無策により、牛や豚の生産数減少に歯止めがかからず、農家は疲弊するばかりだ。TPP交渉により将来に不安を覚えた農家が廃業に追い込まれ減少の一方だ。更に日欧EPAが追い打ちをかけている。農水省と日本獣医師会は、獣医師が多少偏在しているが不足はしていないと言っている。全国の畜産農家で獣医師不足を訴える人はいない。世界レベルで比較しても、日本の獣医師は不足していない。獣医師の人数と分野、畜産市場の推移と動向を示せば、自ずから問題点が明らかになる。不足しているのは、地方の公務員獣医師だけだ。その解決方法は獣医学部新設ではない。処遇の改善にあることは間違いない。ここまで解明出来れば、自ずから安倍の政治私物化があぶり出されることになる。結局、地に足が着いた政治家がいないことが野党の最大の欠点かもしれない。