トリチウム問題を考えよう

福島原発事故後の放射性物質トリチウムを含んだ排水の処理が問題になっている。東電は放射性セシウムを除去した排水をタンクに貯め込んでいる。セシウム等の放射性物質を除去してもトリチウムは除去出来ず残っているからだ。トリチウムとは三重水素のことで、水素の同位体、即ち水素の仲間だ。水素は陽子が一つで軽水素と呼ばれ、陽子が一つで中性子が一つのものは重水素で、陽子は一つで中性子が二つのものを三重水素(トリチウム)と呼ばれている。重さは異なるが、最外殻の電子は同じだから、化学的な性質は同じで同じ挙動をする。それを分離する方法は未だに存在しない。ただ悲しいことにトリチウムには放射性がある。トリチウムには、宇宙線と大気との反応により生成されるものと核反応により生成されるものがある。半減期は12年と短く、エネルギーも低いことからトリチウムは最も毒性の少ない放射性核種の1つと考えらている。東電HDの川村会長が会見で、東電としてはトリチウム水の結論を急ぐとコメントした。即ちトリチウム排水を放流したいという意思表明だ。それに対し、地元の漁業が即反対した。勿論その心情には察して忍びないものがある。更に吉野復興相が「風評被害が発生するので、これ以上福島県漁業者に不安を与えるな」とコメントした。このコメントは如何なのもかと思う。前復興相は失言放題だったが、現環境相には、それ以前に仕事をする積もりがあるのかと問いたい。復興相の仕事は、被災住民の心情に沿うことだけでは無い。福島の復興を考えてベストを尽くすのが仕事のはずだ。いま復興相が福島のトリチウムに目を瞑っていては物事は進まない。処理削減する方法は無いのだから、次善の策を探すことことこそ、復興相の仕事だと思う。先送りするだけでは、益々復興を遅らせるだけだ。だが、内閣改造でも次期復興相に大物は考えられてはいない。トリチウムは益々貯まるばかりだ。