英国総選挙の裏表

英国の総選挙が明日に迫った。保守党の圧勝を目論んでメイ首相が総選挙に打って出たものの、労働党が追い上げているようだ。立て続けに起きた3件のテロがメイ首相への逆風になっている。メイ首相が内相時代に予算削減のため警察官を2万人カットしたことが、テロを未然に防げなかった理由だと非難されている。保守党メイ首相と労働党コービン党首の対立はユニークだ。EU離脱を問う国民投票でメイ首相はEU残留派だった。その後無投票で首相になりEU離脱の旗振り役に転身。しかも、枠内無関税などのメリットがあるユーロ圏からも完全に撤退するハードブレグジットを選択。強硬なEU離脱派へと変身した。一方、コービン党首は、2015年の総選挙で労働党が大敗しミリバンド党首が辞任したため党首選挙に出馬。当初は泡沫候補と見られていたが党首に選ばれた。これまでの労働党党首は中道左派が選ばれていたが、コービンは社会主義色が濃い人物で、もともとはEU懐疑派として知られていた。ところが、労働党はEU離脱には同意しているものの、ユーロ圏へのアクセスは維持する姿勢を打ち出している。党内事情を考慮して党首就任後はEUとの結びつきを重視するソフトブレグジットに改宗。総選挙で保守党が圧勝すればハードブレグジットに、労働党が勝てばEU離脱の見直しも考えられる。ひょっとすると両者は心の底では、自分が負けることを望んでいるのかもしれない。見方を変えると狐と狸の化かし合いのようにも見える。